アラン 幸福論から(Propos sur le bonheur)

 

 

この連休、皆様はいかが過ごされたでしょうか。

コロナウイルス感染に対する非常事態宣言中であり、自粛モードの中、どこへも行かず自宅で過ごされたのではないでしょうか。

私も自宅のある白浜へも帰らず、単身大阪で過ごしました。

そしてこの機会にと思い、久しぶりに専門外の書物を手に取りました(といってもクラウド上ですが)。

今回読んだのは、アラン(Alain)の「幸福論(Propos sur le bonheur)」です。

なるほどと思うところがあり、ブログに書き留めることにしました。

 

アランは、人の抱く恐怖心は「想像力」によってもたらされるものであると述べています。

本書の中で彼は、演奏に臨むピアニストの例をあげています。

そのピアニストは失敗を恐れ舞台に立つことを怖がっていました。

しかしひとたび演奏が始まりピアノを弾き始めると、彼は恐怖心を克服します。

ピアノを弾くという「行動」に集中することで恐怖は消えるのだ、アランはそう述べています。

またアランは、死に対する恐怖心と「行動」との関係を体験するため、自ら志願して戦争に行ったこともあるそうです。

 

今の医療現場で働くスタッフの姿に、このピアニストやアランの「行動」を、私は思わず重ねてしまいました。

異常な緊張感の中、彼らは医療活動を維持するため働いています。

来院される患者さんの中には、熱を出しておられる方、肺炎の方もいらっしゃいます。

そして中にはコロナウイルスに感染している方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、治療の現場では怖いなんて言っていられません。

目の前の患者さんの苦痛を取り除くことの方が優先されます。

もちろん感染予防策を完全にした上でのことですが。

彼らはリスクを顧みず、自分たちのなすべき仕事を全うしているのです。

その姿は尊くもあります。

 

感染を防ぐために、出来ることは全て行わねばなりません。

ただそのために、社会生活の維持が難しくなり、ともすれば世間は過剰に反応しがちです。

人間関係がよそよそしくなってしまうこともあるかも知れません。

しかし、必要以上に恐れて疑心暗鬼になったり、自暴自棄になってはいけません。

今できることは何かを考え、最善を尽くすことが大切です。

 

「幸福になりたいと思ったら、そのために努力しなければならない。無関心な傍観者の態度を決め込んで、ただ扉を開いて幸福が入るようにしているだけでは、入ってくるのは悲しみでしかない。」

現在のような困難な状況に出合ったとき、どう立ち向かうかをアランの「幸福論」は教えてくれると思います。

 

 

 

野ばら

 

病棟のメダカ