がんゲノム医療対応マニュアル

がんゲノム医療対応マニュアル

がんゲノム医療は、次世代シーケンサー(NGS)を用いて、個々の患者のがん組織から多数の遺伝子を同時に調べ(遺伝子パネル検査)、遺伝子バリアントを明らかにして、それぞれの患者に合わせた治療を行うことである。遺伝子パネル検査の一部は、標準治療がない、または終了した(終了見込みを含む)などの患者を対象に2019年6月に保険診療として承認された。現時点では、がん遺伝子パネル検査を実施出来る施設は、がんゲノム医療中核拠点病院(全国11施設)、がんゲノム医療拠点病院(34施設)、がんゲノム医療連携病院(156施設)(以下、がんゲノム関連病院)に限られている。したがって、和泉市立総合医療センター(以下 当センター)は、これらがんゲノム医療関連病院には指定されていないので実施することは出来ない。しかし、がんゲノム医療が必要あるいは希望される患者は、相当数存在している。そこで、当センターにおいては、近畿大学病院がんゲノム医療センターの全面的な協力を得てがんゲノム医療に対応することとする。

1 対象患者

現在、がん遺伝子パネル検査を受けることが出来る患者は以下のとおりである。

  1. 標準治療が確立していない固形がん 例えば、原発不明がん、希少がん
  2. 局所進行もしくは転移性がんで標準治療が終了した、あるいは終了見込みの固形がんで、新たな薬物療法を希望する患者
  3. 全身状態の良好な患者。パーフォーマンスステータス(PS)0,1
  4. 3か月以上生存が見込まれる患者
  5. がんゲノム医療を希望し、近畿大学病院で遺伝子パネル検査を受けることに同意した患者

上記の①または②で且つ③、④、⑤を満たすがん患者とする。

2 がんゲノム医療の手順(別図を参照)

上記対象患者①または②で③④⑤の条件を満たす固形がん患者がおられた場合、以下の手順でがんゲノム医療をすすめる。

1)担当医は、所定の様式*1に患者情報(病名、PS、治療経過、推定予後)を記入し、電子カルテに登録、がんゲノム医療検討委員会*2に出席して内容を説明し、適応評価を受ける。
 *1 電子カルテのワードパレット・共通タブ中にあるがんゲノム医療依頼書
 *2 がんゲノム医療検討委員会は、毎月曜日(キャンサーボード終了後)に開催

2)がんゲノム医療検討委員会で「適応あり」と評価された場合、患者を当センターの「がんゲノム外来(近畿大学腫瘍内科からの派遣医師が担当)」に紹介する。

3)「がんゲノム外来」では患者情報を参考にがんゲノム医療の適応を再度評価する。適応ありと判断した場合は、患者に近畿大学病院における遺伝子パネル検査の内容、検査の可能な条件、検査費用等について説明する。患者の同意を得た後、結果を担当医に報告(同意の有無を含めて電子カルテに記入)する。

4)「がんゲノム外来」で遺伝子パネル検査の「適応有り」と評価された患者においては、担当医が近畿大学病院がんゲノム医療センター(あるいは近畿大学腫瘍内科 米阪外来)に紹介する。近畿大学の受診時には患者本人が受診し、①紹介状(C-CAT※への提供必須の情報を含む)、②腫瘍ブロック、③病理所見用紙を提供する。

  1.  遺伝子パネル検査の適応なし、あるいは同意が得られなかった場合は、当センターの担当医のもとでゲノム医療以外の治療を受ける。
  2.  近畿大学病院に紹介受診された患者は、同病院において「遺伝子パネル検査」を受ける。その結果は、近畿大学病院がんゲノム医療エキスパートパネルで評価される。およそ2か月後に患者さんは近畿大学病院を再受診し、遺伝子バリアントの有無、効果の期待される治療の有無などを近畿大学病院の担当医から説明される(電話での結果説明等は不可)。
  3.  エキスパートパネルの検討結果報告を受けて、遺伝子バリアントがあり、効果が期待される治療薬がある場合は、臨床試験などへの参加を推奨する。それ以外の場合は、当センターにおいてその他の治療あるいは緩和医療(BSC)を考慮する。また近畿大学病院がんゲノムセンターは、(遺伝子バリアントの有無に関わらず)遺伝子パネル検査後の治療内容や生存の有無を定期的にC-CAT※に報告する必要がある。このため当院の担当医は近畿大学病院の求めに応じ適宜診療情報を提供する。 ※C-CAT:がんゲノム情報管理センター(国立がん研究センター)

3 遺伝(家族性)腫瘍への対応

二次的所見として、遺伝性腫瘍の原因遺伝子にバリアントが見つかった場合は、近畿大学病院において、遺伝カウンセリングなど適切な対応がとられる。 近畿大学病院がんゲノムセンターからの指示または患者自身の希望があれば当センターの「遺伝カウンセリング外来」でも対応することが可能である。

4 がんゲノム医療関連の事業

がんゲノム医療関連の事業として、がんゲノム医療検討委員会、がんゲノム医療外来、遺伝腫瘍外来、がんゲノム医療事務局を設置し、それぞれの担当者は別途選任する。

初版 施行日 2020年2月1日

  1. 当センターでのゲノム医療外来は、腫瘍内科外来(担当:近畿大学腫瘍内科からの派遣医師)で実施する。
  2. 近畿大学病院ゲノムセンターを紹介し、遺伝子パネル検査の適応のある患者さんでは、病理組織検体を送付し遺伝子パネル検査が実施されます。
  3. 遺伝子パネル検査を実施してから結果が判明し、エキスパートパネルで対応する薬剤の有無などの検討結果が報告されるまでに約2か月を要すると言われています。
  4. 遺伝子の変化が有り、効果が期待される薬剤ありとなるのは、パネル検査実施患者の10~20%程度とされています。
和泉市立総合医療センター外観

お問い合わせ

0725-41-1331

受付時間:09:00~17:00

〒594-0073
大阪府和泉市和気町4-5-1