がんは遺伝子(ゲノム)の病気です。正常な細胞から遺伝子(ゲノム)の傷を蓄積しながら悪性化し、がん化します。しかし同じ種類のがんにおいても、がんに起きている後天的な遺伝子の変化は患者さまごとに異なります(後天的な遺伝子の変化を「体細胞変異」と言います)。このようにがんに関わる遺伝子、特に治療のターゲット(標的)となる遺伝子を一度に調べ抗がん剤(特に分子標的薬剤)の選択に役立つ情報をそれぞれの患者さまに提供します。このような医療を「がんゲノム医療」と言い、その入り口となる多数の遺伝子を一度に調べる検査を「がん遺伝子パネル検査」と言います。
がん遺伝子パネル検査は2019年6月に保険診療として承認されました。この検査はがんゲノム医療中核病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院で実施されます。当院は2021年8月に厚生労働省より「がんゲノム医療連携病院」に指定され、がんゲノム医療を開始しています。
固形がん(白血病などの造血器がんを除く)で標準治療が終了した、あるいは標準治療が終了となる見込みの患者さまや標準治療がない患者さま(原発不明がんや希少がんなど)に対して、生検や手術で採られた腫瘍組織を用いて、がん遺伝子パネル検査を行います。検査により治療のターゲット(標的)となる遺伝子異常がみつかった場合のうち、患者さまのがんでその治療の保険適用があれば保険診療として行うことがあります。それ以外にも、対象となる企業治験、医師主導試験や臨床試験などがあれば、それらの情報を患者さまにお知らせいたします(治験センターへのリンク)。もしその試験に参加できれば、患者さまのがんにまだ健康保険が認められていない薬でも治療を受けることができる可能性があります。しかし、現状ではそのような治療のターゲット(標的)となる遺伝子異常がみつかる割合は必ずしも高くないこと(概ね10%程度)はあらかじめご理解ください。
がんの標準治療とゲノム医療(国立がん研究センターがん情報サービスより引用)
がん遺伝子パネル検査をご希望の患者様は現在かかられている主治医の先生とご相談の上、主治医より和泉市立総合医療センター腫瘍内科宛てにご紹介ください。和泉市立総合医療センター地域連携センターにて予約受付を行っております。または、和泉市立総合医療センターがん相談支援センターにご相談ください。
地域連携センター
検査説明ならびに検査結果と少なくとも2回の通院が必要です。通院については患者さまご自身の通院をお願いしております。家人のみでの検査説明ならびに検査結果は原則受け付けていません。また、検査結果まで少なくとも2か月程度の期間を要することから全身状態良好(PS:0-1※)な患者さまに限らせていただきます。
※ PS(パフォーマンスステイタス):全身状態の指標の1つ
PS0は、「まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える」状態
PS1は「肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる」状態
チェックリストにて確認をお願いいたします。
【参考】2次的所見の開示推奨度の基準
がん遺伝子パネル検査は、保険診療として実施されます。検査を依頼した際(44万円)と、結果を説明する際(12万円)に費用が発生します。保険適用での自己負担額は1~3割(3割負担の場合は16万8000円)となります。医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」に該当すれば、さらに負担が軽減されることもあります。なお、組織サンプルの質(採取法や固定条件等により左右されます)や量により、検査がうまくいかない場合があります。解析が不成功に終わった場合でも費用は返金されません。また、検査を実施した場合には検査結果の内容にかかわらず費用が発生いたします。
検査結果の報告まで約2か月程度の期間が必要です。組織サンプルの質や量によって再検査が必要になった場合はさらに結果報告までお時間を要することがあります。
がん遺伝子パネル検査では、多くの遺伝子を調べるため、個別化治療につながる可能性のある変化とは別に、生まれつきがんになりやすい遺伝子の変化をもっていることがわかる場合があり、これを二次的所見といいます。この場合、ご本人やご家族の今後のがんの早期発見に繋がる可能性もありますが、将来の健康に対する不安が生じる可能性もあります。二次的所見が見つかった場合でもその結果を聞かないという選択もできます。結果を聞く場合には、十分な理解ができるような説明が必要です。ご希望の患者さんはがん遺伝子診療部門において遺伝カウンセリングを受けることが可能です。
ご質問がございましたらがん相談支援センター(病院2階9番窓口)でご遠慮なくおたずねください。
いつでもお気軽に電話・メールで連絡ください。