血液・腎臓内科

白血病

血液細胞は骨の内部にある骨髄といわれる造血組織の中で母細胞(幹細胞)から娘細胞へと成長(分化成熟)し、赤血球・白血球・血小板となって作られます。急性白血病は、これらの血液細胞が癌化し、自律的に増殖した状態です。白血病は一般に、臨床経過または検査所見により急性白血病と慢性白血病に分類されます。(慢性白血病とその他の骨髄増殖性疾患は他の項で説明します)また、白血球は大きく骨髄球系とリンパ球系に分かれており、前者が癌化したものを急性骨髄性白血病、後者のものを急性リンパ性白血病といいます。

急性骨髄性白血病の発症頻度は年間10万人あたり4人で、40歳以上の年齢で頻度が増加し、60歳がピークとなります。一方、急性リンパ性白血病は年間10万人に1人程度で、0~4歳と60歳以上がピークとなります。

急性骨髄性白血病の症状・特徴

臨床症状は、腫瘍細胞(白血病細胞)の増生とその臓器浸潤あるいは白血病細胞による正常造血能障害により惹起されます。白血病細胞の臓器浸潤は、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経、皮膚など全身臓器に及び、肝臓や脾臓が大きくなったり、歯肉がはれたり、全身に腫瘤(できもの)を作ったりします。また、白血病細胞により造血機能が障害された場合、白血球減少症、赤血球減少症(貧血)、血小板減少症、あるいはすべてが減少すると汎血球減少症という状態になります。正常白血球減少により、一般では治りにくい感染症(口内炎、肺炎など)や原因不明の発熱(不明熱)、赤血球減少により貧血症状(顔面蒼白、息切れ、動悸、全身倦怠感など)、血小板減少により出血傾向(鼻出血・歯肉出血・皮下出血・粘膜出血・消化管出血、性器出血、脳出血など)、などが認められます。

急性白血病の病像の特徴として、この病気には広がりを示す病期(ステージ)という考え方はありません。診断された時はすでに全身性であるため、治療の選択に局所療法はありません。

また、急性白血病の治療では、治療を開始し白血病細胞が骨髄から消失した状態を寛解といい、寛解が得られた場合治療が奏功したと考えられます。一方、一旦寛解した後に再燃する場合があり、その状態を再発と言います。また、一度の治療で寛解し、その後寛解状態を維持し再発しない患者さんもいますが、何回治療しても寛解しない患者さんもいます。そして、寛解状態が長く、何年も維持された方は治癒したと考えられます。

急性骨髄性白血病の診断方法

上記の臨床症状がある場合や血液検査異常が指摘された場合、まず採血検査を行い、血液細胞を数え、異常細胞の有無をチェックします。さらに、骨髄穿刺という骨髄検査を行います。骨髄検査は、胸骨(前胸部中心部の骨)または腸骨(いわゆる腰骨)に針を刺して骨の中心部から骨髄液をとる検査です。検査に先立って、痛み止めとして局所麻酔を行いますので、外来でも施行可能です。採取した骨髄穿刺液は、白血病細胞があるかどうかを顕微鏡で観察し、細胞化学検査・表面マーカー検査にて骨髄性かリンパ性白血病かなどの性質も併せて調べます。さらに、得られた個々の細胞を用いて染色体分析や遺伝子解析も行い、病型分類します。

このようにして詳細な分類を行うわけですが、その病型分類はFAB(French-American- British)分類とWHO(World Health Organization)分類を合わせて行っています。FAB分類では、骨髄中の白血病細胞が30%以上で急性白血病と診断されていましたが、最近のWHO分類では、骨髄中の白血病細胞が20%以上で急性白血病と定義されました。また、詳細な部分のいくつかの変更点もありました。以下の括弧に示すような名称で分類されていますが、それぞれの特徴については主治医にお聞きになるかあるいは専門書などをご参照ください。(特異的染色体異常を有する急性骨髄性白血病、骨髄異形成関連の変化を有する急性骨髄性白血病、治療に関連した急性骨髄性白血病、上記以外の急性骨髄性白血病、骨髄肉腫、ダウン症候群に関連した骨髄増殖症、芽球形質細胞性樹状細胞腫瘍。)

急性リンパ性白血病あるいは慢性骨髄白血病とその他の骨髄増殖性疾患につきましては別項で述べます。

急性骨髄性白血病の治療方法

急性骨髄性白血病に対する基本的な治療戦略は、治癒を目指した強力化学療法であり、作用点が異なるいくつかの抗がん剤の組み合わせによる多剤併用療法を行います。したがってその適応は、化学療法による臓器毒性や合併症に耐えられるかを年齢、臓器機能、全身状態などから慎重かつ厳密に判断され決定されます。

具体的な初発治療は、寛解導入療法と寛解が得られた後におこなう寛解後療法(地固め療法とも言います)からなります。若年成人(65歳未満)に対する寛解導入療法は、7日間のキロサイド持続点滴+3日間のダウノマイシン(もしくはイダマイシン)点滴が標準的治療です。寛解後の地固め療法は、キロサイド大量療法3コース、あるいはキロサイドとアントラサイクリン系薬の組み合わせによる4コースの化学療法が行なわれます。

高齢者においては、臓器機能などの患者側要因により治療関連合併症の頻度や程度が高く、若年成人と同等の治療強度を持つ化学療法を一律に実施することは困難です。しかし、一部には強力治療によって予後が改善する場合もあり、全身状態や臓器機能が十分に保たれている場合には化学療法の適応となります。その場合でも、治療強度を若年成人に対するよりも減量することが必要となります。

当院ならではの取り組み

化学療法のみでは良好な予後が期待できない症例は、同種造血細胞移植の適応となります。同種造血細胞移植とは、ドナーが他人である兄弟や親などからの造血細胞を移植する方法です。悪性リンパ腫や多発性骨髄腫患者さんに対して行う自己造血細胞移植とは異なります。当院では2018年4月以降、積極的に同種移植を行っています(詳細は本ホームページ診療実績の項を参照ください)。移植された症例は、全例日本造血細胞移植学会(TRUMPⅡ)に登録を行っています。EBM(根拠に基づいた医療)に準じた透明性ある治療が、必要であると考えているからです。

また、チーム医療を積極的に実践しており、医師(日本血液学会認定専門医4名)と看護師(輸血学会認定看護師2名、がん放射線認定看護師1名)、薬剤師、理学療法士、医療事務による合同カンフアレンスを毎週開催し、積極的なディスカッションを行い、患者さんにフィードバックできるよう努力しています。