血液内科
腎臓透析内科

悪性リンパ腫

ヒト体内にはリンパ管と呼ばれる全身に巡る細い管があり、その中をリンパ球とリンパ液が流れています。その要所々々にリンパ節をはじめ扁桃腺、脾臓、骨髄、胸腺、虫垂などのリンパ組織があり、種々の免疫機能を担っています。リンパ球は血液細胞と同様、母細胞(幹細胞)から娘細胞へと成長(分化成熟)しています。悪性リンパ腫は、このようなリンパ球とリンパ組織から発生する腫瘍です。種々の成長過程(分化過程)の細胞が腫瘍化するため、固形がんと異なり多くのバリエーションが存在します。

WHO分類では、リンパ腫を①B細胞リンパ腫、②T/NK細胞リンパ腫、③ホジキンリンパ腫の3群に大別し、さらに①のB細胞リンパ腫は白血病群・低悪性度リンパ腫群・中等度悪性群・高度悪性群に、②のT/NK細胞リンパ腫は白血病群・リンパ節外性リンパ腫群・リンパ節性リンパ腫群に細分類されています。発生する細胞・場所がさまざまに異なるので、身体のあらゆるところに発生し、腫瘍細胞の性質もさまざまで治療の反応性も異なります。

全悪性リンパ腫の約30~40%を占める最大病型は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、罹患率は人口10万人あたり4.5人であり、無治療で病勢が月単位に進行する中等度悪性リンパ腫群に分類されます。次に頻度が高い(10~20%)濾胞性リンパ腫は、一般に年の単位で緩徐に進行するB細胞性低悪性度リンパ腫群です。その他の病型については、主治医等にご相談ください。

症状・特徴

リンパ腫の症状は各病型により異なりますが、主な症状は持続性かつ無痛性に増大するリンパ節腫大(できもの)です。約40%の患者が、リンパ節臓器以外の節外病変(脳、肺、肝臓、副腎、骨、消化管などあらゆる臓器のリンパ腫が報告されています)で発症し、節外リンパ腫と呼ばれています。このようなこともあり、発生部位により多様な症状が出現します。

限局的な腫瘍による症状以外に、発熱・体重減少・盗汗などの全身性症状(B症状といいます)を生ずることもあります。ホジキンリンパ腫では約4割にB症状が出現し、その頻度が高いことが知られています。
T/NK細胞リンパ腫では免疫不全となり、種々の感染症(カリニ肺炎、サイトメガロウイルス感染症、糞線虫症など)が初発症状として、あるいは経過中に見られることがあります。

緩徐に進行する濾胞性リンパ腫などでは、診断時に無症状であることも多く、逆に診断時にはすでに進行期であることもしばしばあります。
分子標的薬である抗CD20モノクロナール抗体(リツキサン)などが開発され、単独使用あるいは抗がん剤との併用で治療効果が向上しています。

診断方法

該当病変の病理検査(リンパ節生検など)が確定診断法です。血液検査では可溶性IL-2受容体の濃度上昇が診断の特異性が高く、また病勢の判断にも利用されています。確定診断が得られたら、血液検査、エコー、CT、PET検査などで病変の広がりを調べ、臨床病期(ステージ)を決定します。

治療計画を立てる際、治療法の有効性と予後の予測が大切であり、予後予測因子と予後予測モデルが検討されています。年齢、身体活動度(PS:Performance status)なども考慮されます。リツキサン等の最近の治療法を考慮し提唱された、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の国際予後指標であるNCCN-IPI(National Comprehensive Cancer Network)を下図に示します。

NCCN-IPIでの予後不良因子 スコア
年齢
 ・41歳~60歳 1
 ・61歳~75歳 2
 ・76歳以上 3
血清LDH
 ・正常上限を超えるかつ正常上限の3倍以下 1
 ・正常上限の3倍を超える 2
病期がⅢまたはⅣ期 1
節外病変(骨髄、中枢神経系、肝臓/消化管、肺) 1
Performance statusが2以上 1

スコアによって以下の4つのリスクグループに分類する。
 スコア0または1:低リスク
 スコア2または3:低中間リスク
 スコア4または5:高中間リスク
 スコア6以上:高リスク

統計学的に抽出された上記のリスク因子の点数化による予後分類は、上記のように低リスク・低中間リスク・高中間リスク・高リスクに層別化され、治療効果の解析に重要な要素となっています。濾胞性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫などにおいても同じようなリスク因子が同定され、日常診療に使用されています。
もちろん、それぞれの病型によりリスク因子は異なりますので、詳細につきましては 主治医等にご相談ください。

治療方法

腫瘍の増殖速度が遅い低悪性度リンパ腫群などは、経過観察だけの対処方法が有効と考えられることもあります。
頻度が高い中等度悪性群のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫について述べると、初回治療で病変部が限局している場合、代表的な抗癌剤の多剤併用療法であるリツキサン(R)併用-CHOP療法(エンドキサン、アドリアシン、オンコビン、プレドニソロン)3コースと限局的な放射線照射もしくはR-CHOP療法6コースは同等の治療効果があります。初回治療で病変部位が広範で進行期の場合、R-CHOP療法6~8コースが標準的な治療法です。

 その他の病型についても標準治療が示されており、CHOP療法を含めた多剤抗癌剤による治療、分子標的薬、放射線療法、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法との併用などがあります。詳細については主治医と相談してください。

当院ならではの取り組み

再発・難治のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、救援化学療法に奏功した再発の組織学的形質転換を来した濾胞性リンパ腫患者、再発ホジキンリンパ腫、あるいは初回治療が奏功したマントル細胞リンパ腫の地固め療法、などの疾患・状態には自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が推奨されており、当院でも積極的に行っています。

チーム医療を積極的に実践しており、医師(日本血液学会認定専門医4名)と看護師(輸血学会認定看護師2名、がん放射線認定看護師1名)、薬剤師、理学療法士、医療事務による合同カンフアレンスを毎週行い、積極的にディスカッションを行い、患者さんにフィードバックできるよう努力しています。