皮膚科

皮膚がん

高齢化が進むとともに紫外線増加などの環境的影響が作用し、近年皮膚がんの発生は増えてきています。皮膚は体の表面を覆う臓器であり、黒い、赤い、盛り上がってきた、などの変化がわかりやすいため、他の癌に比べて早期発見されることが多いとされています。

皮膚癌の統計では、基底細胞がんが最も多く、次いで有棘細胞がん、悪性黒色腫などが続きます。悪性黒色腫など一部の癌を除いて、進行は比較的ゆっくりしており、早期治療によって根治が期待できます。しかし、放置していると皮膚以外の臓器に転移することもあり、その際には放射線治療科、腫瘍内科など多岐にわたる科と連携した集学的治療が必要になります。

症状・特徴

皮膚は年齢とともに変化し、様々な皮膚腫瘍が出現します。一番多いのがほくろ(母斑細胞性母斑)です。黒から茶色のほくろが、出生後から壮年期にかけて新しく出来てきます。また、壮年期から老年期にかけては、茶色いしみやいぼ(日光色素斑や脂漏性角化症)が出来てます。

このように、皮膚には良性の皮膚腫瘍が多く出現します。良性の皮膚腫瘍と比較すると、皮膚癌の発生率は低いです。基底細胞がんは、ほくろによく似た皮膚がんで頭頚部に多く発生します。ほくろとの違いは、50歳以降の高齢になって出現し、出血しやすく、ゆっくりではありますが大きくなることです。

有棘細胞がんも比較的高齢になって出現しますが、初期は赤い湿疹によく似ています。湿疹とは違い痒みがなく、そのうちに赤く盛り上がってきます。治らない湿疹をみたら、注意が必要です。悪性黒色腫も、はじめはほくろによく似ています。しかし、次第に大きく広がり、周囲に黒いしみだしや色むらがでてきて、左右非対称となっていきます。ある程度大きくなったものは、見た目だけで皮膚がんだとわかりますが、初期の場合は専門医でも良性の皮膚腫瘍と皮膚がんの鑑別が難しいことがあります。

診断方法

まず問診を行い、次いで視診触診をします。同時に、ダーモスコピーと呼ばれる皮膚専用の拡大鏡を用いて腫瘍を詳細に観察します。その結果、皮膚がんが疑われる場合には、局所麻酔を行い皮膚採取し組織検査を行います。皮膚腫瘍が大きい場合や、皮膚より深い場所にある場合には、画像検査を行い、どの深さまで腫瘍が存在するのか、他臓器への転移はないかどうかを確認します。

1 問診、視診、触診

問診:いつから皮膚腫瘍がでてきたのか、おおきくなってきているのかなどを確認します。また、治らない湿疹に類似した症状である場合には、湿疹治療で改善があるのかどうかや痒みなどの自覚症状の有無も大切です。

視診触診:大きさや色の確認だけではなく、触ってみて硬いかどうか、深いところまで病変がないかどうかを診察します。同時に、皮膚がんが発生する母地(熱傷後瘢痕、慢性膿皮症など)が存在するかも確認します。

2 ダーモスコピー検査

ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いて、皮膚腫瘍を詳細に観察します。エコーゼリーを皮膚に塗布して拡大鏡を押し当て、拡大画像を確認して診断します。良性のほくろやしみはこれだけで診断がつくことが多いですが、皮膚がんを疑った場合には、後述の組織検査が追加必要になります。

3 皮膚生検

局所麻酔を行い、デルマパンチと呼ばれる専用の機械で皮膚を3~6mm程度採取します。採取後は数針縫合します。通常外来診察室で行い、10分程度で終了します。検査当日は入浴できませんが、翌日からは可能です。採取した皮膚を用いて組織検査を行い、皮膚がんの確定診断をします。

4 画像検査

皮膚腫瘍が大きい場合や皮膚より深い場所まで存在する場合には、超音波エコー検査、CT/MRI検査を行います。必要に応じてPET検査を行い、皮膚腫瘍の深さや転移の有無を確認します。

治療方法

皮膚がんの治療は基本的に「手術治療」になります。しかし、がんの種類、進行度、腫瘍の大きさや場所、患者さんの年齢や皮膚以外の病気の状態によっては「手術治療」以外の治療方法を選択することもあります。

手術 皮膚悪性腫瘍切除術
皮弁形成術
植皮術
放射線治療
免疫チェックポイント阻害剤 ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ
分子標的薬 ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ
化学療法 ダカルバジン、
免疫療法 INF-β
緩和医療 疼痛緩和など

当院ならではの取り組み

皮膚科では、週1回腫瘍外来を行い、皮膚科医全員で皮膚腫瘍に取り組んでおります。

また、臨床像、ダーモスコピー検査、病理組織や画像検査などを用いた症例検討会を行い、必要に応じて病理部とディスカッションを行っています。手術については、皮膚悪性腫瘍切除術から皮弁形成、植皮術を行なっていますが、センチネルリンパ節生検などが必要な場合には、大阪市立大学と連携をとって対応しております。

また、転移などの治療に際しては、放射線治療や分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の使用適応を腫瘍内科や放射線治療科、緩和科と検討し、集学的治療を行います。