整形外科

人工関節センター

日本では高齢化が急速に進み、股関節、膝関節の痛みに悩まれている方が年々増えています。その多くが変形性股関節症、変形性膝関節症などの下肢関節の病気に罹患されています。病気が重症となり痛みや変形が強くなると、歩行が困難となります。
人工関節置換術は、これらの病気の症状を劇的に改善する手術であり、当院では従来から積極的に人工関節置換術を行ってきました。安心して手術を受けていただけるように専門のスタッフがチームとなり2009年に人工関節センターを開設し、股関節、膝関節に対する人工関節置換術を数多くの患者さんに行っています。
当センターは極力手術を断らないセンターを目指しています。股関節、膝関節の痛みで悩んでおられる患者さんは、地域のかかりつけ医療機関からご紹介いただき受診してください。手術に対して種々の問題をお持ちの患者さん(85歳以上の高齢の方や、持病をお持ちの方、技術的に難しいと言われている方など)も是非受診して下さい。関節の痛みや変形の程度に応じて、最適な治療方法・治療時期をご相談いたします。

人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)

人工股関節置換術は、股関節のすり減った軟骨と傷んだ骨を切除し、金属やポリエチレン、セラミックでできた人工股関節に置き換える手術です。人工股関節はカップ、骨頭、ステムからできており、カップの内側にライナーがはまるようになっています。
骨頭がライナーにはまることで、滑らかな股関節の動きが再現します。痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨を人工股関節に置き換えることにより痛みを取り除き、日常生活の動作が楽になることが期待できます。また、痛みだけではなく、股関節の可動域制限や左右の下肢の長さに伴う歩行障害など、動作の制限となっている原因を取り除くことで日常生活が楽になります。

人工股関節置換術は、臼蓋形成不全・変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチ性股関節炎、大腿骨頚部骨折、大腿骨頚部骨折後偽関節・骨癒合不全 などの病気をお持ちの方に行います。

人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)

人工膝関節置換術は膝関節のすり減った軟骨と傷んだ骨を切除し、金属やポリエチレン、セラミックでできた人工膝関節に置き換える手術です。大腿骨、膝蓋骨、脛骨のインプラントからなります。これらのインプラントが組み合わさり、滑らかな股関節の動きが再現します。痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨を人工膝関節に置き換えることにより痛みを取り除き、日常の動作が楽になることが期待できます。また、O脚(もしくはX脚)に変形し、伸びない・曲がらないで日常生活に支障をきたした膝関節を、人工膝関節に置換することで出来るだけまっすぐな下肢、曲げ伸ばししやすい膝に矯正します。

人工膝関節置換術は、変形性膝関節症、大腿骨顆部壊死症、関節リウマチ性膝関節炎、膝関節周囲の骨折の一部 などの病気をお持ちの方に行います。
病状によっては単顆型人工膝関節置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:UKA)も行っています。

人工股関節置換術、人工膝関節置換術ともに、手術は主に全身麻酔で行います。手術時間は2時間前後で、入院期間は手術後2週間から3週間です。それ以上の入院、リハビリテーションが必要な病状の重い方は、回復期リハビリテーション病院に転院し、リハビリテーションを続ける場合もあります。
当センターでは、退院後も定期的に外来に受診していただき、人工関節が生体内で正常に機能しているかをチェックします。
長期間使用し、人工関節の摩耗やゆるみをきたした人工関節や、人工関節周辺での骨折や感染などのケースでは、人工関節の再置換術が必要になる場合があります。そのため、退院後も定期的受診は非常に重要となります。今まで感じなかった違和感や突然発生した痛みなどがあれば当センターにすぐにご相談ください。

当センターの特徴

断らないセンター

手術の適応がありご本人やご家族が希望すれば、85歳以上の高齢の方であっても、全身に持病をお持ちの方であっても(当院の内科、麻酔科などの他科との相談し手術を行える病状の方は)人工関節置換術を行います。
また、技術的に難しい場合でも手術を行います。再置換術(人工関節の入れ換え手術)も受け入れます。

極力筋肉をきらない低侵襲な手術

術後の回復が早くなるように、極力筋肉を切らない低侵襲な手術を行っています。
但し、安全に操作を行うことが最も大切ですので過度に小さい切開(股関節では8cm未満、膝関節で10cm未満)での手術は行っていません。

CTから作成した3D画像データを用いた術前計画

術前の撮影したCTデータより、専門のソフトを用い3Dで術前計画を作成し、一人一人に適合した人工関節を選択します。


△人工股関節置換術 術前計画

△人工膝関節置換術 術前計画

ナビゲーションを使用した手術

人工関節がより正確に設置できるよう、術中に各種ナビゲーションシステム(ZIMMER BIOMT社AR Hip Navigationシステム、京セラ社NAVISWISS、ZIMMER BIOMT社KneeAlign2等)を使用し、手術を行っています。


チーム医療

医師、病棟看護師、手術室看護師、理学療法士が人工関節置換術に精通したチームとして、良質な医療を提供します。また、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーが入院から退院まで人工関節の治療をサポートします。手術に影響のある持病をお持ちの場合、その持病の当院専門科のバックアップのもと、手術を行います。

診療の流れ

  1. 地域のかかりつけ医療機関からご紹介の上、外来を受診してください。診察の上、治療方法を決定します。
  2. 人工関節置換術を行うことが決定したら、手術日、入院日を決定します。
  3. 手術の前に外来で、全身スクリーニング検査 (レントゲン、心電図、心エコー、下肢血管エコー、呼吸機能検査、血液検査、尿検査、骨密度検査 など)を行います。この術前検査の結果で異常があった場合、また手術に影響のある病気をあれば、当院の各内科に院内で紹介し受診していただきます。また、術前計画に使用する、手術する関節周囲のCTを撮影します。
  4. 手術の前に外来で、当院の麻酔科に受診していただき、麻酔科医師の診察と、手術中の麻酔方法について説明を受けていただきます。また、当院の歯科口腔外科にも受診していただき、口腔内に異常がないかのチェックをしていただきます。
  5. 手術の前日に入院となります。(内科的な持病をお持ちの方は、手術の数日前に入院が必要となることがあります。
  6. 人工股関節置換術、人工膝関節置換術を行います。手術は主に全身麻酔で行います。手術時間は2時間前後です。
  7. 手術翌日から理学療法士によるリハビリテーションを開始します。
  8. 入院期間は手術後2週間から3週間です。杖歩行が可能となれば自宅退院となります。
  9. 自宅に退院後、引き続き外来に受診していただき、術後の経過を診察します。手術後1ヵ月で外来受診していただき、診察で問題なければ、以後3ヵ月、6ヵ月、1年ごとに通院いただき、 人工関節が生体内で正常に機能しているかをチェックします。

受診方法

当センターは地域のかかりつけ医療機関と密に連携し、外科的治療を行っています。地域のかかりつけ医療機関からご紹介いただき、受診してください。(当院の整形外科以外の科にかかりつけの患者さんは、かかりつけ主治医に相談の上、院内紹介で受診いただいても結構です。)
月曜日、水曜日、金曜日に人工関節による手術を担当する医師が診察しています。

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
外来診察
担当医師
黒田 人工関節センター
手術日
黒田
伊東
人工関節センター
手術日
伊東
永田

・手術実績 / 2018年146件、2019年181件、2020年179件、2021年213件、2022年 227件