がんセンター AYA世代がん患者支援

AYA世代がん患者への支援体制について

思春期・若年成人に発生する悪性腫瘍をAYA(Adolescents and Young Adults)世代がんと呼びます。 どの年齢を含めるかに関しては、一定していませんが、当センターでは、15歳以上39歳以下に発生する悪性腫瘍としています。 それぞれの疾患および腫瘍の進展度に応じた治療を行うことが重要ですが、これらの年代の患者さんには、特有のさまざまな問題があり、年齢に応じた療養環境や人的サポートが必要です。 そこで当センターでは、AYA世代がん患者さんが治療に専念し、療養生活、治療後の生活を安心して過ごすことができるよう、がん治療に係る診療科の医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど多くの領域の関係者が協力して、できる限りの支援をいたします。

AYA世代がん患者の問題点

AYA世代のがん患者さんには、学業や進学、職場勤務や就職活動、恋愛や結婚、妊娠・出産、育児など、他の世代にはみられない特有の悩みがあり、長期のフォローが必要になることや晩期合併症が起こりうることなど多くの問題があります。 しかし、中高年以降のがん患者さんに比べ患者数が少ないことや希少がんの頻度が高いことなどから、患者さんの診療や支援の体制が十分に整っているとはいえません。 現在、国の第3期がん対策推進基本計画の中で取り組むべき施策のひとつとして、「AYA世代のがん患者に対する支援体制の構築」が掲げられています。当センターでは、AYA世代のがん患者さんに安心してがん治療を受けていただくため、以下のような取り組みを行っています。

和泉市立総合医療センターにおけるAYA世代がん患者に対する支援対策

就学、就労に対する支援

がん治療により、学業や就労の遅れ、中断などの影響を受け、人生設計の変更を余儀なくされることがあります。また、がん治療により、仕事や子育て、介護などへの影響が出てくることにもなります。 当センターでは、がん治療を可能な限り外来診療とし、学業や就労が継続できるよう配慮しています。 また、医療ソーシャルワーカーや社会保険労務士などが学校や会社と連絡をとり対応させていただきます。 学業や就労に関して心配なこと、相談したいことがあれば、気軽にがん相談支援センターにご相談ください。

生殖機能と妊孕性(にんようせい)に関わる支援

生殖機能とは、子どもを持つこと(妊娠すること・産むこと)に必要な機能のことです。 妊孕性とは、「妊娠のしやすさ」のことです。抗がん剤治療や放射線治療などにより生殖機能・妊孕性が低下することがあります。 当センターでは、がんの治療が開始される前に、生殖機能・妊孕性に影響が出る可能性のあることを説明し、希望される場合には、治療前に精子や卵子を採取して凍結保存しておくことのお手伝いをしています。 詳しいことを知りたい場合は、気軽にがん患者相談支援センターにご相談にください。

*化学療法および放射線療法の性腺毒性によるリスク分類はASCOガイドラインをご参照ください。
性腺機能不全リスク分類(PDF)
*大阪がん・生殖医療ネットワーク、大阪府がん診療連携協議会 小児・AYA部会、大阪国際がんセンター がん対策センターよりがん治療前の妊孕性・生殖機能温存に関する小冊子が刊行されていますので、ご参照ください。
がん治療前の妊孕性・生殖機能温存(PDF)

関連サイト
大阪がん・生殖医療ネットワーク | がんになっても子供が欲しい - 妊よう性・生殖機能温存 - (osaka-gan-joho.net)
大阪府 – がん治療と妊娠 – 地域医療連携 (j-sfp.org)

がん治療に伴う合併症や副作用に対する支援

AYA世代のがん患者さんでは、化学療法や放射線治療に関連する合併症のうち、治療が終了してから発症する、または治療終了後も続く合併症(晩期合併症)が重要になります。 晩期合併症としては、二次がん(抗がん剤や放射線が原因で発症するがん)やホルモン異常(不妊など)、臓器障害(心機能障害や腎機能障害など)、骨粗鬆症などがあります。 担当医だけでなく、産婦人科、循環器内科、腎臓内科、内分泌・代謝内科などとの連携が必要になります。 当センターでは、がん治療終了後も長期にわたって、多くの診療科の協力を得ながら経過を観察し、適切な対応を行ってまいります。
また、治療中の副作用でも、脱毛や色素沈着などは、とくに気になると思われます。これらに対しても相談支援もさせていただきます。

難治がんに対する治療選択への支援

AYA世代に発症するがんでは、治りにくい稀ながんが含まれることがあります。 また、再発した患者さんや治療しても効果が得られない患者さんもおられます。 これらの患者さんに対しては、がんゲノム医療(がんセンター・ゲノム医療委員会をご参照下さい)を含めて、有効な治療法の選択に向けた取り組みを行ってまいります。

社会的問題や精神的ストレスへの支援

思春期の患者さんが含まれることから、恋愛や結婚に関する問題、被扶養者における医療費や生活費の問題、病気や将来への不安など、患者さんおひとりでは解決できないことが多く、精神的ストレスも大きくなります。 がん患者相談支援センターでは、精神科の医師、臨床心理士なども加わり、どのような悩みにも支援してまいります。

遺伝性腫瘍に関する支援

AYA世代がんのなかには、乳がん、卵巣がん、大腸がんなどの一部に遺伝性(家族性)腫瘍が疑われるものがあります。 当センターでは、これら遺伝性腫瘍の診断を目的として遺伝子検査を保険診療として行うことが可能です。 がん患者相談支援センターまたはがん遺伝子診療部門で、遺伝性腫瘍に関する教育、情報提供を行っています。 また、必要に応じて、遺伝子検査を行い、適切な治療に繋げることができます。 また、遺伝性腫瘍の可能性がある場合には、専門家による遺伝カウセリングを行っています。

関連する診療科、部署

腫瘍内科、血液内科、内分泌・代謝内科、呼吸器内科・外科、消化器外科、乳腺外科、婦人科、泌尿器科、脳神経外科、耳鼻いんこう科、皮膚科、病理診断科、看護部、地域連携センター、情報管理室、医事課

AYA世代のがん患者・家族の皆様へのメッセージ

AYA世代のがん患者さん、およびそのご家族の皆様には、それぞれの病気・治療のこと、それ以外にも多くの悩みや心配なことを抱えておられることと思います。 和泉市立総合医療センターでは、できる限り治療に専念していただけるよう、患者さんの悩み、不安な気持ち、大切なことなど、ひとり一人の問題点を解決できるようお手伝いさせていただきます。 皆様の悩みや心配ごとを「がん患者相談・支援センター」に持ち寄り、ご気軽にご相談ください。お待ちしています。

若年者在宅ターミナルケア支援事業

和泉市では、若年のがん患者の人が住み慣れた自宅で、安心して生活が送れるよう在宅サービス利用料の一部を助成しています。
詳しくは、下記にてご確認ください。
若年者在宅ターミナルケア支援事業/和泉市 (osaka-izumi.lg.jp)
PDF

参考:当センターにおけるAYA世代がん患者の件数(初回治療例)

がんの種類 2020年 2021年 2022年
15-29歳 30-39歳 合計 15-29歳 30-39歳 合計 15-29歳 30-39歳 合計
白血病224011112
悪性リンパ腫011022011
乳がん101033033
肺がん000011000
胃がん011000011
大腸がん022011033
膵がん011011000
子宮体がん000011022
子宮頚がん27938114610
卵巣がん(境界悪性含む)000202101
膣がん000000011
精巣がん011101011
男性生殖器のがん000011000
膀胱がん000000011
頭頚部がん011000000
皮膚がん101000101
原発不明がん000000011
総計 616226192572128

過去3年間に当センターで診療したAYA世代の悪性腫瘍は、白血病、悪性リンパ腫、乳がん、子宮頚がん、卵巣がん(境界悪性含む)、精巣がん、大腸がん、膵がんなどでした。
白血病など小児に多いがんに加えて、乳がんや子宮がんなど成人に多いがんが含まれ、多種多様な腫瘍(がん)の治療を担当してまいりました。

和泉市立総合医療センター外観

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