形成外科

皮膚がん

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織にわけられ、真皮の中には、汗腺、脂腺、毛包といった表皮からつながる「皮膚付属器」があります。表皮や皮膚付属器を作っている細胞が悪性化したものを「皮膚がん」と呼びます。非常にたくさんの種類の皮膚がんがありますが、代表的な皮膚がんとして、表皮由来には、基底細胞癌、有棘細胞癌、ボーエン病、パージェット病、悪性黒色腫(メラノーマ)があげられます。このほか、皮膚付属器由来には、汗腺癌、脂腺癌、毛包癌などがあります。長期間にわたる日光暴露(紫外線)、慢性刺激(大量の放射線、ヤケド・キズ跡等)等が原因と考えられています。

皮膚がんは直接見ることができるため、早期発見が可能ですが、ゆっくり進行することが多く、ホクロやイボ、キズ、湿疹、シミ等と似ていることがあるため、放置されていることがあり、注意が必要です。

症状・特徴

1 基底細胞癌

日本人に最も多い皮膚がんで、40歳以上の中高年に多く、頭や顔面に多く発生します。リンパ節や他の臓器への転移は稀ですが、再発や皮膚より深い組織(筋や骨)まで拡がることがあります。

症状)初期は、「ほくろ」と似た黒い盛り上がりですが、進行すると、表面が崩れて、ジュクジュクして出血したり、潰瘍化したりします。

2 有棘細胞癌

「基底細胞癌」に次いで多い皮膚がんで、高齢者多く、顔面や手背に多く発生します。

症状)初期は、「かさぶた」がついた赤みを帯びた盛り上がりであったりしますが、進行すると、表面が崩れて、ジュクジュクして出血したり、カリフラワーのような形になったり、潰瘍化し、付近のリンパ節や他の臓器に転移します。

3 ボーエン病

日光が当たらない部位(胸・腹・背部など)に発生することが多く、表皮内部にとどまっている場合(表皮内癌)を「ボーエン病」、それより深部(真皮)へ進行すると、「ボーエン癌」と呼ぶことがあります。

症状)「湿疹」と間違われやすく、正常な部位とは境界がはっきりとした赤い島状や円形の発疹で、フケのような「かさぶた」が付着したり、びらん(皮膚がめくれた状態)ができることがあります。

4 パージェット病(Paget病)

乳房、ワキ下、外陰部・肛門周囲に多く発生する表皮内癌で、「乳房パージェット病」と「乳房外パージェット病」にわけられます。「乳房外パージェット病」では、スキップ現象と言って、見た目上の病変より広い範囲に散らばって病変が存在することが多く、治療範囲を決定するのが難しいことがあります。深部へ進行すると、「パージェット癌」と呼ばれ、リンパ節や他臓器に転移することがあります。

症状)痒みを伴う「湿疹」のような赤い斑であることが多く、進行するとびらんや潰瘍を形成します。

診断方法

皮膚がんは、病変の組織の一部を採取し、顕微鏡で観察して、確定診断します。また、病変部の拡がり(進行度)やリンパ節や他の臓器への転移を調べるため、超音波検査、CT・MRI、PET等の画像検査を必要に応じて行います。

治療方法

皮膚がんの治療は、外科的切除が基本となります。皮膚がんの種類、及び進行度に応じて、切除範囲を決定し、病巣辺縁より必要な距離をとって拡大切除(病巣そのものと拡がっている可能性がある周囲の組織も併せて切除)します。小さな欠損の場合は切除縫縮(そのまま縫い合わせる)が可能ですが、欠損量が多くなると、欠損部位に応じて、皮弁(周囲の組織を欠損部に移動する)や植皮術(他の部位から採取した皮膚を移植する)等の方法を用いて再建を行います。また、リンパ節転移を認めた場合は、リンパ節郭清術(領域のリンパ節を広く切除する)が必要となります。

外科的治療が十分に行えない場合や他の臓器への転移を認める場合やがんの種類によっては、放射線治療や化学療法を行うことがあります。

当院ならではの取り組み

当院では、特に病変の切除後の再建に力を入れて治療を行っています。

皮膚がんは、顔面など、整容的にも機能的にも問題となる部分に発生することが多いため、形成外科的な技術を要します。手術は、患者さんの全身状態、年齢を考えた上で、変形やひきつれ(拘縮)が最小限となる再建方法を選択し、手術後は、変形やひきつれを防ぐため、後療法(テープや装具固定)を行います。また、必要に応じて、本来の見た目・機能に近い状態に改善するように、目立つ傷跡・変形に対して修正手術も行っております。

当院では、再発がないか入念に経過観察を行いながら、外科的治療後、スムーズに社会復帰できることを目指してます。