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乳腺外科

はじめに

和泉市立総合医療センター乳腺外科は、2018年4月より新病院移転とともに、診療体制を大きく変えました。まず、初診時に生検を含めてすべての検査が終了して、少しでも不安の期間が少なくなるよう配慮しました。形成外科と腫瘍内科とも連携して、乳房再建、および周術期や再発乳がんの抗がん剤治療も最新の医療で提供できるように改編しました。

取り扱い疾患

乳がん、乳腺良性腫瘍(線維腺腫、葉状腫瘍など)

乳がんの自覚症状

もっとも多いのは、腫瘤自己触知です。お風呂でなにげに触っているとしこりを感じたと来院され、精査すると乳がんであったということが多いです。しかもほとんどの場合、痛みは伴いません。(なかには痛みを伴うしこりがあるという例もありますが。)乳がんのしこりは、境界がはっきりとしないことがおおく、硬さも硬いことが多いです。
その一方で、急に起こる乳房の痛み(胸壁の痛み)のみがあり、心配して来院される患者さんも多数います。
そういう場合でも念のために乳がんが潜んでいないか、超音波とマンモグラフィで精査をしますが、乳がんを認めないことがほとんどです。急激な胸壁の痛みが生じた理由につきましては、申し訳ありませんがその点に関しての精査・治療に関しては乳腺外科ではわかりかねます。なにとぞご了承ください。
乳がんの症状としてほかに考えられるのは、皮膚の「えくぼ症状」、乳頭からの出血が主にあります。
進行した乳がんなどの場合は、わきの下のリンパ節が腫れることもあります。(ただしリンパ腫などの血液疾患でわきの下のリンパ節が腫れることもあります。)
以上まとめますと、①乳房に腫瘤を感じる(痛みを伴わないことがほとんど)②乳房皮膚のえくぼ症状 ③乳頭からの出血 を自覚された場合は、電話の上、当科受診予約をしてください。電話予約は、平日の14時以降でお願いします。

乳がんの診断

乳がんを診断する方法として、マンモグラフィと超音波の2つがあります。

マンモグラフィは40歳以上の自治体の検診として安価で受けることが可能であり、それにより乳がんの死亡率を減少させたという医学的根拠があります。ゆえに自治体検診として扱っています。


乳がんの超音波像の例

一方、超音波での検診は現時点では自費診療となります。 (乳房に腫瘤を触れる、乳頭から血が出るという症状がなく、漠然と心配なので検診してほしいという場合)超音波での検診のデータとしては、厚生労働省が国家的プロジェクトとして立ち上げたJ-START(ジェイ・スタート)という乳がん検診の比較試験があります。40歳以上の女性で、マンモグラフィと超音波検査を併用する検診と、併用しない検診(マンモグラフィのみ)を比較して死亡率が併用群で下がるかどうか観察する試験ですがまだ最終結果はでていません。途中経過として併用群で乳がんの検出率があがったとの結果がでていますが、要精密検査の率もあがっており、解釈にはまだもう少し時間が必要です。

また、マンモグラフィも超音波検査もそれぞれ一長一短があります。 マンモグラフィは、腫瘤の石灰化の存在と質を確認します。腫瘤の形が毛羽立っているか否か、石灰化の形や分布で、より悪性に近いか、良性に近いかを判断します。自治体検診で、石灰化ありと診断されてもほとんどが良性の石灰化ですので過剰に心配する必要はありません。


同時両側乳がんの例。右の赤丸の精査(腫瘤あり)で来院されましたが、左の赤丸も石灰化の異常あります。



上の写真の右の赤丸のアップ。石灰化がわかります。これで反対の乳がんもみつかりました。



高濃度乳腺の例

マンモグラフィは石灰化がよくわかる反面、背景の乳房の濃度により腫瘤を見落とされる可能性があります。正常な乳腺組織はマンモグラフィで白く映りますが、腫瘍も白く映ります。正常乳腺と腫瘍の影のバランスで、がんがあるかどうかを判断します。乳腺組織が密な方(高濃度乳腺)は、マンモグラフィで小さな腫瘤があっても見落とされる 可能性があるのが問題です。

超音波検査は、しこりの形や境目部分の性状などで良性か悪性かを判断します。超音波検査は、前述した高濃度乳腺の方でも、腫瘤の存在を確認できます。ゆえに高濃度乳腺の方で乳がんがより見つけやすいだろうと想定され、前述したJ-STARTという試験が行われたわけです。しかしながら、超音波検査は石灰化の描出は苦手です。マンモグラフィで明らかに悪性の石灰化があるのに、超音波検査では異常を認めないということもまれにあります。いずれにせよ最終的に乳がんと診断するには針生検が必要です。


マンモグラフィや超音波での見た目で「これは怪しい!」と判断すれば、細い針で細胞を吸引して良性か悪性を判断(吸引細胞診)するか、少し太めの針で組織の一部を採取する、コア生検という方法で診断します。
(写真:コア生検器械:赤い四角でかこまれたところに採取された微小の組織があります。)

これらの検査で、がんと確定診断できないものの、やはり見た目では怪しいと判断する場合は、吸引式生検(マンモトーム生検、バコラ生検などと呼ばれます)を行います。

吸引式生検器械(バコラ生検):バコラは器械の大きさが比較的小さく簡便に行えるのが特徴です。



吸引式生検器械(マンモトーム生検):バコラよりも一回り太い針で組織を採取します。採取できる標本の量はバコラ生検よりも多く採取でき、より正確な診断が可能です。

これら針は、鉛筆の太さくらいある針で組織を機械で吸引しながら採取します。標本の量が多いのでより正確な診断が可能ですが、針が太いので後出血のリスクがあるのと、検査費用が高価(保険適用で2万円ほどかかります)なのが欠点です。

一昔前では、がんと診断できなかったら診断もかねて外科的切除をしていましたが、今は上記の方法で切除する前にほとんどが、ただしくがんでないか否かを診断できます。

一方良性腫瘤の代表的なもので線維腺腫というのがあります。比較的若い方に多く見られる疾患です。針生検でそのように診断されればまず切除の必要はありませんが、経時的に増大傾向がある場合は、線維腺腫と似た組織を呈する葉状腫瘍の可能性もあり、切除が考慮されます。葉状腫瘍の場合は、まれですが悪性のものもあり、良性でもきっちり切除しないと断端から再発する恐れがあるからです。

乳がんの症状としては、乳房にしこりを触れる(ほとんどが痛みを伴いません)、乳頭から血がでる、乳房の皮膚にえくぼみたいなへこみがある、乳頭が反対側と比べて違った方向に向いているなどがあります。

乳がんは自分でも発見できるがんです。自己検診をすることで、乳がんの死亡リスクを減らすという医学的根拠はありませんが、常日頃から、ご自身で月1回、セルフチェックをして、上記の症状を感じたら、ためらわずに当院など乳腺専門医のいる病院で診てもらいましょう。

乳がんの治療

乳がんは、大きく分けて非浸潤がんと浸潤がんがあります。非浸潤性乳がんは、がん細胞が乳管の中にとどまっており、基本的に転移や再発をすることがありません。したがって手術療法のみが選択となります。しかしながら、乳管に伝って広がることが多いために、たちのいいがんではあるもの、乳房を全摘しないといけないこともあります。その場合は乳房再建も考慮されるべきでしょう(後述)。一方、浸潤性乳がんは、がん細胞が乳管を突き破っており、全身にがん細胞が回っている可能性もあります。したがって、手術だけでなく、ホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療(がん細胞の鍵穴を攻撃して正常な細胞には攻撃しない治療)、 放射線療法などがあり、個々のがんに対して、適切な順番、組み合わせで治療します。その選択肢は個々の患者さんと、乳がんのタイプにより多種多様です。
以下は、浸潤性乳がんについて述べます。

  1. 1) 閉経の有無
  2. 2) 腫瘍径
  3. 3) わきのリンパ節の転移の有無
  4. 4) ホルモンレセプターの発現と、その感受性の割合

    乳がんのタイプにより女性ホルモンに依存して大きくなるものがあります(ホルモン受容体陽性乳がん)。その場合は、がん細胞の表面の女性ホルモンの鍵穴をブロックしたり、血中のホルモン濃度を下げたりすることで、がん細胞の増殖を抑えることができます。これが乳がんのホルモン療法です。一般的にホルモン受容体陽性の乳がんの性格はいいです。

  5. 5) HER2過剰発現の有無

    HER2はそれがあると、がんの増殖が活発であるといわれており、ハーセプチンという分子標的薬の適応となります。HER2過剰発現のある乳がんは、以前はたちが悪いものでしたが、ハーセプチンという薬の登場で、その性格はかなり抑え込むことができるようになりました。あるデータでは再発のリスクをハーセプチンにより半分に抑えることができると言われています。

  6. 6) 組織学的グレード分類

    施設により、核グレード分類という方法でも判定されます。

1~3の3段階で、1が良い、2が普通、3が悪いです。これはがん細胞の見た目を観察しています。3だと外見が「不良」になり、たちの悪い乳がんの可能性があると判断します。

  1. 7) Ki-67 インデックス(施設によりMIB-1インデックスとも言います)の割合

    これは、がん細胞の増殖活性を特殊な染色で見る方法です。おおよそですが、その染色割合が20%を超えると、がん細胞の増殖活性が高く、たちの悪い乳がんの可能性があると考え、抗がん剤を追加で投与する判断材料になります。

  2. 8) 脈管侵襲

    がん細胞のすぐ周りにある小さなリンパ管、血管の中にがん細胞がある場合、脈管侵襲ありと表現します。これを認める場合は、全身にがんが回っている可能性があり、同様に抗がん剤を追加で投与する判断材料になります。

一般によくがんステージ分類をして、5年生存率がどうだとかいいますが、乳がんに関してはステージよりも、 上記1)~8)のことから判断して、どういう性格の『がん』なのかを判断することが重要となります。  ステージというのは、2)3)のみでしか判断していません。  同じステージⅠの乳がん(腫瘍径2cmくらいでリンパの転移なし)でも、たとえば 『ホルモン感受性があり、 HER2過剰発現がなく、組織学的グレードが1、Ki-67が5%の乳がん』と、 『ホルモン感受性がなく、HER2過剰発現があり、組織学的グレードが3、Ki-67が80%の乳がん 』とでは治療法の選択は大きく異なるものとなります。 前者は術後はホルモン療法(内服薬)のみの治療で十分と思いますが、後者は術後に化学療法+ハーセプチンが必須となります。

では、同じく腫瘍径2cmくらいでリンパ節の転移なし、ホルモン感受性があり、HER2過剰発現がないものの、組織学的グレードが3、Ki-67が80%の乳がんだとどうしましょうか?こういうパターンも日常臨床でよく遭遇する例であり、術後補助療法としてホルモン療法はするものの、化学療法を追加で投与するかどうか、悩むところです。 そういう場合、希望者にはオンコタイプDX(http://www.oncotypeiq.com/ja-JP/)という検査を追加で行い、がん細胞の性格を遺伝子学的に検索して化学療法を追加した方がいいか否かの判断をします。しかしこの検査は現在保険適用ではなく、検査をするだけで37万円くらい負担しなければいけないという欠点があります。 適応となる例は、閉経前および閉経後のリンパ節転移陰性・ホルモン受容体陽性の浸潤性乳がん患者、およびリンパ節転移陽性・ホルモン受容体陽性の浸潤性乳がん患者です。検査を受けると再発スコア結果が算出されます。再発スコア結果は0から100までの数字で表され、乳がんが診断から10年以内に再発する可能性について、そしてさらに重要な、化学療法がどのくらい有効かについての、情報を提供することができます。この検査は、最初の手術(コア生検、乳腺腫瘤摘出術、乳房切除術)で切除した組織を少量使って実施しますので、この検査のために追加の手術や処置を受ける必要はありません。

ホルモン感受性がないとか、HER2過剰発現があるタイプの乳がんならば、一般に手術に加えて、抗がん剤が使用されます。期間は、3か月から半年です。 ハーセプチンは1年間投与します。

がんというのは、見つかった段階で、全身転移を起こしているかもしれません。そういうのを微小転移と呼びます。 庭を放置していると雑草が生えてきますが、その雑草(微小転移)が生えてこない(再発しない)ように、庭全体に除草剤(抗がん剤)を散布するようなものです。 どんな小さながんでも、タイプによっては初期の段階で全身転移しているというのが、最近の考え方です。 ほとんどの浸潤性乳がんは、手術のみでは治療が不十分であり、乳がんのタイプ別により適切な薬物治療(ホルモン療法や抗がん剤治療)を加えることが、将来の再発を回避するために、極めて重要なのです。


手術について

手術方法の選択については、「乳房」と「わきのリンパ節(腋窩リンパ節)」をそれぞれどうするかということを考慮します。

乳房の手術

手術は腫瘍の大きさが大きければ温存が困難ですが、乳がんのタイプによっては、術前抗がん剤を半年ほど投与して、小さくしてから手術するという方法があります。手術前に抗がん剤 をしても大丈夫です。手術を先にしても、抗がん剤を先にしても、再発率や生存率に差はないことが医学的に証明されています。乳がんの広がりが大きすぎて、乳房温存の手術が困難な場合は、再建術も可能です。再建の方法や時期に関してはいろんな選択肢があります。乳がんの手術と同時に再建もしてしまうやり方、あるいはいったん乳房を切除してから、後日に再建をするやり方、また再建に使用するものとして、自家組織(背中の筋肉を用いるとか、腹壁の脂肪や筋肉を用いる)での再建、人工物(インプラント)を挿入するやり方があり、それぞれメリット、デメリットがあります。インプラントを挿入する場合は、保険適用で手術は可能ですが、長期のデータがまだわかっておらず、一般に10年を目安に入れ替えをしないといけませんから、それをするかしないかはよく考えないといけません。

わきのリンパ節の手術

わきのリンパ節に関しては、以前まではごっそり切除していましたが、画像上明らかに転移がなければ、 通常はセンチネルリンパ節生検という方法が適応になります。センチネルリンパ節というのは、がんが最初に行き着くであろうと思われるリンパ節です。センチネルリンパ節生検とは、手術中にそれを見つけて術中に病理検査を行い、転移がなければそれ以上のわきのリンパ節はとらないでおく方法です。これにより、わきのリンパ節切除による弊害の、リンパ浮腫や、肩関節の可動制限などが回避されます。しかし、画像上明らかにわきのリンパ節に転移がある人、またそれにより術前に抗がん剤を受けた人は、従来通りわきの下のリンパ節を切除することになります。

放射線治療について

放射線は、乳房温存の手術をされた方に必要です。残存乳房に再発する可能性があるからです。週5日×5週の照射を通常行います。 それとは別に、わきのリンパ節転移の個数が多かった場合(一般に4個以上)は、たとえ乳房全摘をしたとしても、胸壁と手術した側の首の付け根に放射線照射を追加するのが一般的です。 初診時に遠隔転移のある乳がんや、再発乳がんの治療について  初診時に残念ながら、肺や肝臓、骨などの遠隔転移を認めた方(転移性乳がん)または、術後の経過中に再発してしまった方(再発乳がん)は原則として手術は適応外になります。 その場合、ホルモン療法や、抗がん剤などのお薬による治療がメインになります。  治療法は、生命を脅かすほどの転移(例えば多発する肺や肝臓の転移)がある場合は、ホルモン感受性のある乳がんでも、抗がん剤から開始したほうがいいでしょう。 そうでない場合は、転移性乳がんの治療は極力副作用の少ない治療からはじめます。

ホルモン感受性乳がんならば、ホルモン療法からはじめるのが通常です。 HER2過剰発現があるならば、まず第1選択としては、抗がん剤と前述したハーセプチン、および近年開発されたパージェタという新たな分子標的薬(2013年発売)を組みあわせて投与します。パージェタの上乗せで従来の抗がん剤+ハーセプチンのみよりも生存期間の延長が認められています。 一般論として、転移再発乳がんの治療は薬剤が効かなくなれば、違う薬剤を順次変更して使用していきます。 しかし、残念ながら、転移性乳がんに関しては、完治する可能性は極めて低いのですが、進行を食い止めることは可能です。がんが、おとなしくしていてくれる時間を極力長くできるように、かつ副作用は少なくてすむように治療していくことが転移再発乳がんの治療において重要なのです。 また、乳がんや卵巣がんの5-10%は、遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています。その中で最も多くの割合を占めるのが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と(HBOC)よばれるものです。当院では、ご本人さんの乳がんの性格および家族歴を聴取して、希望するならば、乳がん発症リスクの高い遺伝子をお持ちであるか否かの検索を行っております。詳細は、担当医師にお尋ねください。


最後に

乳がんは、他のがんと比べて性格はいいのですが、その分、長く付き合わないといけない病気です。手術が終了しても5~10年間は経過をみないといけません。 ストレスをためずに、しっかり情報を整理して、きちんとした治療を受けましょう。 乳がんと診断されると誰もが不安になり本当にこの治療方針でいいのか?と感じることでしょう。そういう人の弱みに付け込み、医学的根拠のない、高価な代替医療を勧めるサイトがたくさんあります。くれぐれも誤った情報を入手して誤った治療法を選択しないようにしてください。

以下に、正確な情報を配信しているサイトを紹介しますので、参考になさってください。

受診手順

症状がある方

乳房にしこりを感じる、乳頭から出血がある、乳房の皮膚や乳頭がくぼんできたなど→保険診療で受診

症状がない方

40歳以上は市検診で指定された項目は可能ですが、オプションで超音波検査などを希望される方や、40歳未満の方は自費診療になってしまいますので病院窓口でご相談願います。

受診に関してのお願い

予約外で来院された場合、大幅に受診時間が遅れたり、後日予約取得の上、再来院をお願いすることがあります。なるべく予約取得の上、ご来院お願いします。紹介状をお持ちの方は、地域連携室を通しての予約取得、お持ちでない場合は、平日の14時以降に外科外来へお電話くださり、予約取得をお願いします。

文責:和泉市立総合医療センター乳腺外科 手塚健志

外来診察担当医表

午前 阪本 手塚 阪本 手塚
午後 手塚 阪本 手塚

受付時間:午前8時~午前11時30分。

がんセンター 緩和ケア セカンドオピニオン 機能評価認定 大阪府がん診療拠点病院 地域連携室だより 医療安全管理マニュアル 地域医療連携室 和泉市立総合医療センター 広報誌 健やかいずみ