乳腺外科

手術について

手術方法の選択については、「乳房」と「わきのリンパ節(腋窩リンパ節)」と「再建」をそれぞれどうするかということを考慮します。

乳房の手術と再建
手術は腫瘍の大きさが大きければ温存が困難ですが、乳がんのタイプによっては、術前抗がん剤を半年ほど投与して、小さくしてから手術するという方法があります。手術前に抗がん剤 をしても大丈夫です。手術を先にしても、抗がん剤を先にしても、再発率や生存率に差はないことが医学的に証明されています。乳がんの広がりが大きすぎて、乳房温存の手術が困難な場合は、再建術も可能です。再建の方法や時期に関してはいろんな選択肢があります。乳がんの手術と同時に再建もしてしまうやり方、あるいはいったん乳房を切除してから、後日に再建をするやり方、また再建に使用するものとして、自家組織(背中の筋肉を用いるとか、腹壁の脂肪や筋肉を用いる)での再建、人工物(インプラント)を挿入するやり方があり、それぞれメリット、デメリットがあります。インプラントを挿入する場合は、保険適用で手術は可能ですが、長期のデータがまだわかっておらず、一般に10年を目安に入れ替えをしないといけませんから、それをするかしないかはよく考えないといけません。各種再建に関するデータもありますので診察時にご相談下さい。
また2024年春より「切らない乳がん治療」の一つであるラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(radiofrequency ablation therapy:RFA)が保険診療となりました。
RFAは、通常の組織型で腫瘍径1.5㎝以下の単発性限局性病変、腋窩リンパ節転移および遠隔転移を認めないなどの条件を満たすがんに対して全身麻酔下に腫瘍を焼灼する方法です。メリットは乳房に傷が残らず変形が少ないのですが、デメリットとしては断端の術後情報が不明であること、焼灼するために術後により大きな硬結として触知してしまうこと、術後放射線療法施行ののち3か月後に吸引式生検でがんの遺残の有無を確認し、遺残があれば外科的切除を必ず施行しないといけないことがあります。
残念ながら当院ではマンパワーが極めて不足しておりRFAを施行するほど診療の時間を割り当てることが困難です。そのため、現状では導入を見送っております。
適応は担当医師が判断しますが希望される場合は当院と連携しております大阪公立大学に紹介をいたします。
わきのリンパ節の手術
わきのリンパ節に関しては、以前まではごっそり切除していましたが、画像上明らかに転移がなければ、 通常はセンチネルリンパ節生検という方法が適応になります。センチネルリンパ節というのは、がんが最初に行き着くであろうと思われるリンパ節です。センチネルリンパ節生検とは、手術中にそれを見つけて術中に病理検査を行い、転移がなければそれ以上のわきのリンパ節はとらないでおく方法です。これにより、わきのリンパ節切除による弊害の、リンパ浮腫や、肩関節の可動制限などが回避されます。しかし、画像上明らかにわきのリンパ節に転移がある人、またそれにより術前に抗がん剤を受けた人は、従来通りわきの下のリンパ節を切除することになります。