腎がん
腎臓は、肋骨の下端あたりの高さにある握りこぶし大の臓器で左右2つあり、その主な働きは、血液をろ過して尿をつくることです。それ以外にも、血圧のコントロールや造血に関するホルモンの生成やビタミンDの活性化なども行っています。
症状・特徴
腎がんの3大症状として、古くは血尿・背中の痛み・腫瘍が自分で触れるとされていましたが、すべてかなり腫瘍が大きくなってからの症状であり、現在では、健康診断や他の病気で行った検査で偶然に発見されるものがほとんどです。腎がんの好発年齢は50-70歳であり、10万人あたりの発生率は男性で7人、女性で3人ぐらいです。
診断方法
- 超音波検査
非侵襲的検査であり簡便に行える超音波検査で、がんの位置や大きさを確認するために行います。この検査で腎がんが疑われる場合には、下記の検査を行い、さらにくわしく調べていきます。 - CT検査
診断目的に造影剤を用いたCT検査を行います。造影剤というお薬を血管から注入し、短時間にたくさんの画像を撮影します。
腫瘍の大きさ・性状・周囲臓器への広がりが分かるだけでなく、手術になった場合に血管の走行も確認できるため、有益性の高い検査です。 - MRI検査
造影剤のアレルギーがある場合、造影CTが行えないためMRIで代用することがあります。また、CTで診断が難しい場合に行うこともあります。
治療方法
■外科的治療(手術)
- 腎部分切除術
がんを取り除くために、腫瘍とその周囲を部分的に切除する術式です。
腎臓をすべて摘出する術式に比べて、残った腎臓の機能を温存できるという利点があります。
主に7cm以下の小さながんの場合に選択されますが、位置によっては選択できない場合もあります。手術方法としては、開放手術(開腹手術)と腹腔鏡下手術があり、2016年からは、ロボット支援下腹腔鏡手術が保険適応となっています。腹腔鏡手術では出血量が少ないという利点があり、当院でもロボット支援腹腔鏡手術を積極的に行っています。 - 根治的腎摘除術
がんのある側の腎臓をすべて取り除く手術方法です。腎部分切除が適応にならない場合に行われます。術式としては、腎部分切除と同様に開放手術と腹腔鏡手術がありますが、現在では腹腔鏡手術が標準的な術式になっています。また、ロボット支援腹腔鏡下腎摘除術が2022年4月より保険適応となっており、当院でも積極的に行っています。
■薬物療法
腎がんが発見された段階で他臓器に転移があるような場合は、手術を行わず、生検でがんの診断を行ったうえで全身薬物療法を行うこともあります。腎がんに対する薬物療法は、1980年代から開始されたサイトカイン療法(インターフェロン-αやインターロイキン2)が長らく一般的でしたが、その有効率は15%程度と決して満足できる結果ではありませんでした。その後、2008年にチロシンキナーゼ阻害剤が初めて腎がんに保険適応となり、2010年にはmTOR阻害剤も保険適応になり、これら分子標的治療薬と呼ばれる新薬が腎がんに使われるようになり飛躍的に治療効果が高くなりました。現在では国内でチロシンキナーゼ阻害剤は5種類、mTOR阻害剤は2種類が使用できるようになっています。また、2016年からは新規免疫治療薬として、がん細胞が免疫を逃れて生き延びようとする機構をブロックして、がんに対する免疫力をあげるという免疫チェックポイント阻害剤も保険適応となりました。現在では、4剤の免疫チェックポイント阻害剤が国内で使用可能となりました。さらには、これらの薬剤を組み合わせた治療も行われるようになり、チロシンキナーゼ阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤を併用することで有効率が70%を得られたという報告もあります。
当院ならではの取り組み
当院では、腹腔鏡手術とロボット支援下腹腔鏡手術を積極的に行っており、2名の腹腔鏡技術認定医が在籍しており、安全かつ根治性を得られる手術を行えるよう心掛けています。年間の手術件数は、2021年で25件、2022年で30件の腹腔鏡もしくはロボット支援下腹腔鏡手術で腎がんの手術を行いました。
また、最近ではチロシンキナーゼ阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤の投与症例も増えてきており、その副作用管理については、泌尿器科医だけでなく、専門的な内科医師(循環器内科・呼吸器内科・代謝内科)とも協力し治療できる環境が整っています。