ロボット支援手術
ロボット手術とは
消化器外科領域では従来、おなかを大きく切開する開腹手術が主に行われてきましたが、近年では低侵襲手術と呼ばれる腹腔鏡手術が広く普及し、がん手術に対しても多くの病院が腹腔鏡手術で施行するようになりました。さらに医療技術は進歩し、腹腔鏡手術の特性を伸ばしつつ、弱点を克服するためにロボット機能を付加させた手術がロボット手術です。すなわち、腹腔鏡手術の究極の進化形がロボット手術です。
腹腔鏡手術と同じような小さな創で手術を行います。おなかにあけた穴にロボットアームを取り付け、術者はサージョンコンソールと呼ばれる操縦席に座って、ロボットを操作します。Intuitive Surgical社の定める専門トレーニングを終了し、認定資格を取得した医師が執刀します。
手術支援ロボット
ダヴィンチサージカルシステム ダヴィンチXi
ダヴィンチサージカルシステムはIntuitive Surgical社(米国)が開発した手術支援ロボットで、世界で最も普及している手術支援ロボットです。ダヴィンチXiは第4世代の最新機で、当院でも採用している機種です。
ダヴィンチサージカルシステムは以下の3つのパーツから構成されています。
- ・ペイシェントカート
- :4つのアームをもつロボットの本体。このアームを操作。
- ・ビジョンカート
- :画像の処理をおこなう中枢機器。
電気メスや手術の映像を記録する記憶媒体が搭載。 - ・サージョンコンソール
- :術者が座ってロボットを操作する操縦席。
ロボット手術の利点・欠点
利点
- 高解像度の3D画像
- 多関節をもった自由に曲がる鉗子
- モーションスケール(手元の動きをより小さくして術野で再現する)機能で精緻な動きが可能
- 手振れ補正機能
ダヴィンチXiの持つこれらの機能を利用することで、腹腔鏡手術よりさらに精緻な手術が可能となります。そのため、がん病巣の正確な切除ができるほか、術中出血量の減少・術後合併症の減少・体の機能温存などが期待できます。
欠点
- 手術操作に大事な触覚がまったくないため、注意が必要。
- 維持コストが高い。
ロボット手術の費用
消化器外科領域では2018年4月に食道がん・胃がん・直腸がんに対するロボット手術が保険適用となり、2020年には膵がん、2022年4月には結腸がん・肝がんに対するロボット手術も保険適応となりました。
医療費の負担は胃がん手術のみロボット手術加算がありますが、他は従来の腹腔鏡手術と変わりません。また、高額療養費制度が適用された場合は収入額にもよりますが、費用負担はさらに軽減されます。
医療費の詳細については担当窓口にてご相談下さい。
当科でのロボット手術
当科では2021年4月から胃がん手術に対してロボット手術を導入し、さらに2022年8月から直腸がん手術に対しても導入しました。ロボット手術はがんの根治性の向上のほか、患者さまへのさらなる安全性と低侵襲性が期待できますので、現在、当科でも積極的にロボット手術を施行して、症例数を伸ばしております。今後もさらに適応範囲を広げる予定で、結腸がん・肝がん・膵がんについても導入準備を進めています。