解剖・疫学
胆管とは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ流す導管です。胆管は、肝臓内の細い枝(肝内胆管)に始まり、次第に合流して2本の太い管(左肝管・右肝管)となり、肝門部で1本に合流し(総肝管・総胆管)、その後膵臓を貫いて十二指腸乳頭部に開口します。胆のうは、胆汁をいったん溜めておく袋のような臓器であり、食事をするとその情報が伝わって溜まった胆汁を排出します。
胆管がんは、胆管に発生する悪性腫瘍です。発生部位により、肝内胆管癌、①肝門部(領域)胆管がん、②遠位胆管がん、③胆嚢がん、④乳頭部癌に分類されています。肝内胆管がんは、肝細胞がんとともに原発性肝がんとして取り扱われています。
特に多い年代は50歳台~70歳台です。男女差を見てみると、胆道がんのうち、胆管がんは男性に多く、胆嚢がんは女性に多いという差があります。
胆道がんの罹患者数(2019年)は、男性で11,964人、女性で約10,195人であり、男女差はなく男女ともに全がん罹患者数の3%程度です。2020年の死亡者数は、男性9,354人、女性8,416人であり、50歳代から年齢とともに増加します。胆のう・胆管がんの5年生存率は、全体で24.5%と不良です(2009-2011年の症例)。しかし、サバイバー5年生存率(診断されて〇年生存された方がそこから5年生存する率を出したもの)でみますと、診断後3年生存された患者さんのその後5年生存率は70%を超えています(国立がん研究センター がん情報サービスより引用)。つまり、診断時に適切な治療を受けることで長期生存の可能性があります。
診断
胆道がんを発症しやすい因子(危険因子)
1) 胆管がんの危険因子
膵・胆管合流異常(胆管拡張型)
膵・胆管合流異常は、膵液の流れる管と胆汁の流れる管の合流する場所が正常より手前に形成される先天異常で、胆道拡張症は膵・胆管合流異常により、肝外や肝内の胆管が拡張する先天異常です。胆道拡張がある場合は胆管がん、拡張がない場合は胆嚢がんのリスクがあることが知られています。胆道がんの予防のために、膵・胆管合流異常(胆管拡張型)と診断された時点で肝外胆管切除・胆道再建術の適応になると考えられています。そして胆管の拡張がない場合には胆嚢摘出術の適応になると考えられています。
原発性硬化性胆管炎(難病指定)
肝臓内および肝臓外を走る大小の胆管に炎症が生じ、その結果胆管の狭窄や閉塞を起こし胆汁が流れにくくなる進行性の胆汁うっ滞疾患です。定期的な画像検査および血液検査による厳重な経過観察が必要になります。
化学物質
2012、印刷工場などで塩素系の有機洗浄剤を長年にわたって扱ってきた人に、胆管がんの発生頻度が高いことが報告され、職業性胆管癌と総称されています。塩素系有機洗浄剤の主成分のジクロロメタンと1,2 ジクロロプロパンの曝露が原因とされています。
2) 胆嚢がんの危険因子
膵・胆管合流異常(上述)
胆嚢結石
結石径3cm以上、有症状例、胆石保有期間が長いなどが胆嚢がんの危険因子とされています。
胆嚢ポリープ
大きさが10mm以上で、内部エコーが低エコー実質様で、広基性(ポリープの根元が広い)のものは胆嚢がんの可能性が高くなります。
胆嚢腺筋症
胆嚢腺筋症の癌化に関してはエビデンスレベルの高い論文はありませんが、分節型の胆嚢腺筋症では底部での胆嚢がんの合併率が6.4~6.6%と高く切除の対象になります。
その他、喫煙、飲酒は胆嚢がんへの影響があることが知られています。
症状
黄疸、右上腹部痛、体重減少などが認められます。胆管がんでは黄疸が90%と最も多いです。胆嚢がんでは右上腹部痛、横断、悪心嘔吐などがある一方、検診での腹部超音波検査や胆嚢摘出術で偶然発見される症例もあります(0.3%~1.0%)。十二指腸乳頭部癌では黄疸発症が72~90%と最も多く、発熱、腹痛、全身倦怠感などが認められることがあります。
検査
上記、診断・症状に該当する場合は精査が必要になります。
第1段階
血液検査(胆道系酵素の上昇や腫瘍マーカーであるCA19-9の上昇)と腹部超音波(腫瘍の指摘もしくは胆管の異常な拡張などの診断に優れます)
第2段階
胆管がん、胆嚢がんではCT、MRI (MRCP)検査で胆管の狭窄部(がんの部位)、胆管内のひろがり、周囲への血管への影響などを評価します。十二指腸乳頭部がんでは上部消化管内視鏡検査で組織の生検(病理検査)を行います。
第3段階
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP:下図(日本胆道学会ホームページより))、胆道鏡検査、超音波内視鏡検査(EUS)やIDUS(管腔内超音波検査)などを施行し、併せて細胞診や組織診検査も行います。PET検査は、胆道がんの局在診断には有用ではありませんが、全身の転移状態が分かることがあり、治療法選択のために用いられることがあります。
これらの検査を経てがんの病期診断を行ったのち、治療を進めていきます。
治療
胆道癌診療ガイドライン改訂第3版 「治療アルゴリズム」から引用
1) 切除可能か不能かの判断
胆道がんの根治的治療法は外科切除ですが,外科的切除に耐えられないような全身状態である場合や肝予備能低下のため肝切除に耐えられないと判断された場合には外科切除は困難と判定されます。肝臓や肺などに転移を伴う場合や全身のリンパ節に転移を来した場合は、切除不能と診断されます。癌が周囲の血管へ浸潤した場合や胆管の病変が広範に進展した場合、切除可能と判断するかどうか明らかなコンセンサスは得られていません。また,近年化学療法が進歩し、当初切除が難しいと判定されても手術が可能になる(conversion surgery)ことがあります。
2)-A 切除可能時の治療
a. 術前胆道ドレナージ
広範肝切除を予定する胆道がんでは、内視鏡を用いて乳頭部から病変部を超えるところまでチューブを留置する術前胆道ドレナージを行うことが推奨されています。肝切除が必要でない胆管がんでも,黄疸を軽減される目的で内視鏡的胆道ドレナージを行うことがあります。
b. 術前門脈塞栓術
50~60%以上の肝切除を予定する肝門部領域胆管がんなどに対しては、術後肝不全を回避するために術前門脈塞栓術を行うことで手術の安全性を高めています。
c. 外科切除
肝門部領域胆管がんの術式としては、胆管と胆のうに加えてがんの局在により肝臓の左右いずれかを切除するのが一般的です(左図:日本胆道学会ホームページより)。胆のうがんにおいては、がんが胆のう粘膜から固有筋層にとどまる場合は胆のう切除のみですが、がんが漿膜下層まで広がっている場合は、リンパ節への転移の可能性が高まるためリンパ節郭清に加えて胆管や肝臓の一部の切除が必要になります。遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんにおいては、胆のうと総胆管、十二指腸、膵臓の一部である膵頭部を広範囲に切除する膵頭十二指腸切除が標準的な術式となります(下図:日本胆道学会ホームページより)。
切除範囲が大きくなること、肝臓や膵臓などの生命に極めて重要な臓器に直接操作が加わることで、術後合併症や手術死亡リスクは他の臓器のがん手術に比較して現在でも依然高率です。特に肝門部領域胆管がんは術後合併症の頻度が43~69%、在院死亡率が5~18%と非常に高いのが現状です。手術を受ける前には、その手術でどのようなメリットがあり、どの程度危険度があるのかよく理解しておく必要があります。
2)-B 切除不能時の治療
胆道ドレナージ、胆管ステント
化学療法などを行う前に黄疸を軽減させる必要があります。
切除不能遠位胆管閉塞例に対しては,黄疸を改善させるため内視鏡的に胆道ドレナージ後胆管ステントを留置します。ステントにはプラスチック製と金属製があり、ステント留置後の胆道閉塞症状再発の頻度が少ないことから金属製が推奨されています。切除不能肝門部胆管閉塞例に対しては,技術的問題や化学療法著効例に対するconversion surgeryの可能性を考えプラスチック製を選択する施設も多いです。
2)-B-① 化学療法
日本においては、ゲムシタビン・S1・シスプラチンの3剤が主に用いられており、これらの薬剤(単剤または組み合わせ)を用いた治療が行われます。また2022年12月にデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)が医療保険収載されました(使用時はゲムシタビン、シスプラチン併用を8クール以内)。標準的な治療が困難な場合に限りますが,マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)例ではペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)の投与で奏功した胆管がん症例もあります。
2)-B-② 放射線治療
放射線照射は、進行を遅らせる、痛みなどを緩和するための姑息的治療として行われています。放射線治療に加えて化学療法を同時に施行する化学放射線療法も有効とされており、選択されることがあります。
2)-B-③ 緩和治療
切除不可能で、薬物療法の効果がなくなった場合は、緩和ケアの対象です。疼痛に対する緩和医療、胆道閉塞に対する胆道ステント挿入、など苦痛をできる限り軽減しQOL(生活の質)を維持することを目的として、緩和ケアが施行されます。
当センターの特徴
各科との綿密な連携に基づいて確定診断を行い、切除可能と判断されれば、根治性と安全性を考慮して、肝胆膵外科高難度技能指導医が責任者として外科的切除を積極的に行っています。その際、患者さんの全身状態やがんの進行度を十分検討して手術法を選択しています。切除不能な場合には、キャンサーボードでの討議に基づいて化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療を行っています。
特に、腫瘍内科においては薬物療法を積極的に行い、ゲノム医療を含めた最新最良の治療法を提供できるように心がけています。
また、当院では充実した緩和ケアが提供可能であり、疼痛に対する放射線照射や薬剤投与、減黄治療としての胆道ステント留置などの症状緩和を積極的に実施しています。
参考文献
- 胆道癌取扱い規約 第7版:日本肝胆膵外科学会編、金原出版、2021年
- 胆道がん診療ガイドライン改訂第3版:日本肝胆膵外科学会、胆道癌診療ガイドライン作成委員会編、医学図書出版、2019年
- 臨床に直結する肝・胆・膵疾患治療のエビデンス:跡見 裕ほか編、文光堂、2007年
- Kubo S, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 479-88.
- 日本胆道学会ホームページ:URL, http://www.tando.gr.jp
- 担当医としてこのように答えたい がん患者・家族からの質問:監修:山口 俊晴、ヘルス出版、2019年
- 国立がん研究センター がん情報サービス: URL, https://ganjoho.jp/public/index.html