大腸がん

大腸がんは大腸の粘膜から発生し、進行とともに大腸の壁に深く浸潤していき、周囲のリンパ節または肝臓や肺などの遠隔臓器へ転移します。大腸は大きく結腸と直腸に分けられ、結腸から発生したがんは結腸がん、直腸から発生したがんは直腸がんと呼ばれます。
日本では大腸がんが年々増加しており、がん統計のまとめによると2019年の罹患数では胃がんや肺がんをおさえて、大腸がんが第1位となっており、2021年のがん死亡数では肺がんに次いで第2位となっています(国立がん研究センターがん対策情報センター)。
大腸がんは、早期発見されれば治療成績は極めて良好であり、転移を伴う進行大腸がんでも、手術療法・化学療法・放射線療法などを組み合わせた集学的治療にて良好な成績が期待できることもあります。

症状・特徴

早期の大腸がんでは自覚症状が見られないことが多く、がん検診や人間ドックで偶然見つかることがほとんどです。がんが進行して大きくなってくると、症状が出てくることが多くなります。大腸がんの症状としては、下血、便秘、下痢、便の狭小化、腹部腫瘤、貧血、体重減少などがあります。
さらに進行して腫瘍が大きくなると、大腸の内腔が閉塞して便やガスが通過しにくくなり、腹部膨満、腹痛、嘔吐など腸閉塞を発症することがあり、緊急処置や緊急手術を要します。
右側大腸がん(盲腸がん、上行結腸がん、横行結腸がん)では、腫瘍がかなり大きくなるまで症状が出にくいため、腹部腫瘤として触れたり、貧血で発見されたりすることもあります。左側大腸がん(下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がん)では、比較的早期から下血、便秘・下痢、便の狭小化などの症状が現れます。さらに進むと、内腔が完全に詰まって腸閉塞状態になります。

診断方法

早期大腸がんの大部分は自覚症状がないので、早期発見のためにはスクリーニング検査が重要です。スクリーニング検査は、多数の人の中から「その病気の疑いのある人」をいち早く発見し、早期の治療につなげるための簡便な検査です。この検査で大腸がんが疑われる結果となった場合には、次に精密検査または確定診断のための検査を行います。ここで、大腸がんの確定診断がついたら、さらにがんの拡がり(転移)を調べるための全身検査を行い、病期診断を行います。

スクリーニング検査(検診)

大腸がんのスクリーニング検査として有効な検査法が便潜血検査です。便に血が混じっているかどうかを調べる検査で、便の一部をとって調べます。通常、2回行って判定します。簡便な検査であり、40歳を過ぎたらこの検診を受けることをお勧めします。
採血検査での腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の異常値をきっかけに診断されることもあります。こちらも簡便な検査ではありますが、早期がんのうちは正常値であることが多く、進行がんがあっても必ず数値が上昇するとは限りません。

精密検査/確定診断のための検査

① 大腸内視鏡検査 肛門から内視鏡(カメラ)を挿入して、直腸から盲腸までの全大腸を調べます。検査前に腸管洗浄液を1~2リットル飲んで大腸内をきれいに(前処置)してから検査を行います。通常、検査は20~30分程度で終わります。多少の苦痛や腹痛を伴うこともありますので、鎮静剤や鎮痛剤を使用することも可能です。
腫瘍性病変を見つけた場合には悪性か良性かを調べるために病変の一部を採取して、病理検査を行います。

正常
大腸がん

② 大腸CT検査 肛門から炭酸ガスを注入して、大腸を拡張させた状態で2-3回のCT撮影を行います。その後、コンピューター処理を行うことで大腸の3次元画像を構築することで、大腸の走行を確認したり、腫瘍性病変の正確な位置や大きさなどがわかります。

全身検査

CT・MRI検査 がんの大きさや周囲臓器への浸潤の有無、リンパ節、腹膜、肝臓、肺など他臓器への転移の有無を調べて、病期進行度を決定し、治療方針を立てます。
また、手術後の再発チェックや化学療法中の効果判定を目的に行うことも多いです。

肝転移
肺転移

PET検査

大腸癌に対するPET検査の感度は非常に高いとされており、CT検査、MRI検査、超音波検査などでははっきりしない転移・再発巣がPET検査で発見できることがあります。

大腸がんの進行度分類 (Stage)

日本では、「大腸癌取扱い規約」に基づいたステージ分類が、進行度の分類に用いられています。 ステージ分類は、0からⅣまであり、がんの壁深達度(どれくらい深く進行しているか)、リンパ節転移の有無、遠隔臓器転移の有無(肝臓、肺、腹膜などへの転移)により決定されます。

治療方法

大腸がんの治療には内視鏡治療、手術療法、化学療法、放射線療法などの方法があります。その進行度に応じて治療方法が選択されます。

内視鏡治療

内視鏡を用いて大腸のポリープや早期癌を切除する治療を内視鏡治療といいます。リンパ節転移の可能性がほとんどなく、原発巣が一括切除できる大きさと部位にあることがこの治療の条件となります。
内視鏡でがんを切除する代表的な方法には、ポリペクトミー、粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)および粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)があります。腫瘍の形と大きさに応じてこれらの切除方法を使い分けます。
切除した病変の病理診断の結果によっては外科的な追加切除が必要となる場合もあります。

手術療法

リンパ節転移の可能性がある早期がんや進行がんには手術治療が行われます。手術では大腸の切除だけでなく,リンパ節郭清も行います。そして、大腸を切除するための手術方法には現在、以下に説明する3つの方法があります。がんの進展具合や患者の状態を考慮して、最適な手術方法を選択します。

① 開腹手術 腹部を大きく切開し、外科医の手で直接、病変部位の大腸とリンパ節を切除する方法です。
メリット:術者が患部を直接見て、触った感覚を確認しながら手術が進められる点です。大きな出血などがあってもすばやく対応することが可能です。
デメリット:大きな傷が必要になるため、患者さんへの身体の負担の大きさ、手術後の痛みなどが予想されます。

② 腹腔鏡手術 炭酸ガスで腹部をふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら,数カ所の小さな創から腹腔鏡(カメラ)と専用の手術器具を入れて手術を行う方法です
メリット:繊細な操作が可能であり、出血量が少ない。手術創が小さいため、整容性に優れており、術後の痛みが少なく回復が早い。
デメリット:手術操作に一定の技術を要し、手術時間が長くなる。

③ ロボット支援下手術 手術支援ロボットは①高解像度の3D画像、②多関節をもった自由に曲がる鉗子、③モーションスケール機能、④手振れ補正機能など、腹腔鏡手術にはない様々な機能を有しています。
メリット:開腹手術や腹腔鏡手術と比べて、より繊細で精密な手術が可能となるため、がんの根治性や排便・排尿・性機能など術後機能温存の向上が期待できます。
デメリット:触覚がなく注意が必要。維持コストが高い。

化学療法

化学療法は、抗がん剤を投与して癌細胞の死滅や増殖抑制を目的としておこなわれます。
大腸がんの化学療法には大きく分けて、以下の2つの目的があります。
1)手術後の再発予防を目的とした「術後補助化学療法」
2)手術による根治切除が困難な場合の「切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法」
切除不能な高度な転移のある場合でも、化学療法によって腫瘍が縮小し、外科手術による切除が可能となる例もしばしばみられます。
大腸癌の化学療法ではさまざまな抗がん剤が適応されますが、多くの場合いくつかの抗がん剤を組み合わせて使用されます。また、分子標的治療薬とよばれる新規薬剤によるがん治療も行なわれています。分子標的治療薬は、がんの増殖などにかかわる特定の分子だけに作用して、がん細胞の増殖を抑えるのが特徴で、抗がん剤と併用することで治療効果が高まることが期待できます。さらには、がん治療において「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新薬が登場し、この薬が効く可能性のあるタイプのがんと診断された場合には、大腸がんにも使用することが可能となっています。

放射線療法

大腸がんに対する放射線療法には大きく分けて、次の2つがあります。

① 主に直腸がんに対して、手術前に放射線照射を行うことでがんのサイズを縮小し、治癒率の向上、肛門の温存や局所再発の減少をはかります。

② 切除困難ながんによる症状を和らげる目的で行います。
骨盤内病巣、骨転移、脳転移、リンパ節転移などに照射して、疼痛、出血、神経症状などの症状が
約80%で改善します。

当院ならではの取り組み

当院での大腸がん治療は患者の状態やがんの進行度に応じて治療方針を決定し、手術療法を中心にして化学療法や放射線療法などを行っています。治療方法の選択に際しては、手術を担当する外科医、化学療法を担当する腫瘍内科医、放射線治療を担当する放射線治療医、緩和ケア医、病理医のほか、専門知識を有する看護師や薬剤師などの医療スタッフが参加するカンファレンス(キャンサーボード)を毎週開催して、全員の合意のもとにそれぞれのがん患者にとって最善と考えられる治療方法を決定しています。すなわち各分野の専門医および専門スタッフなど十分な人材が確保され、円滑な協力関係が構築されていることが当院の強みです。
早期大腸癌に対しては、消化器内科が中心となって内視鏡的切除(ポリペクトミー・EMR・ESD)を積極的に行っています。手術療法に関しては、低侵襲手術である腹腔鏡手術はもちろんのこと、最新の手術方法であるロボット手術も積極的に行っています。切除不能な進行再発大腸がんに対しては、腫瘍内科医が全身化学療法を施行しています。通常、根治が難しいと考えられている進行再発大腸がんに対しても、手術療法・化学療法・放射線療法などを組み合わせた集学的治療を行なって、できうるかぎり根治が得られるように計画した治療を行っています。