多発性骨髄腫

疾患概念

多発性骨髄腫は骨髄を主たる増殖の場とする多発性の形質細胞腫瘍であり、血清中や尿中に単一蛋白(M蛋白と言う。)を認めることが多く腫瘍に関連した臓器障害を有する疾患と定義されている。その細胞の起源は骨髄中の形質細胞(リンパ球の免疫グロブリン遺伝子再構成を行った後の長期生存型の形質芽細胞と考えられている。)である。国際骨髄腫作業分科会が提唱している骨髄腫診断基準が広く用いられている(詳細は専門書を参照してください。)。この中で全身化学療法の対象となるのは高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨病変(CRABと称される。)などの臓器障害のうち一つ以上を有している(症候性)多発性骨髄腫である。

症候・身体所見

主要症候としては①骨髄中での腫瘍増殖による貧血などの血球減少に伴う症状、②破骨細胞の活性化と骨芽細胞の文化抑制に基づく骨病変、高カルシウム血症、③M蛋白による腎障害、過粘稠症候群、アミロイド浸潤による手根管症候群や巨舌などが見られる

国際病期分類

国際病期分類 (ISS;International Staging System)

ステージ 基準 生存期間中央値
血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L、かつ血清アルブミン≧3.5g/dl 62カ月
ⅠでもⅢでもないもの 44カ月
血清β2ミクログロブリン>3.5mg/L 29カ月

改訂国際病期分類

改訂国際病期分類(Revised International Staging System: R-ISS)

ステージ 基準 5年生存割合
ISS stageⅠかつiFISHにてstandard risk 染色体異常かつ血清LDH正常範囲 82%
R-ISS stageのⅠでもⅡでもない 62%
ISS stage Ⅲかつ high risk 染色体異常または血清LDH高値 40%

high risk 染色体異常:del(17p)かつ/またはt(4;14)かつ/またはt(14;16)ありstandard risk染色体異常:high risk 染色体異常 を認めない

治療と予後

1 初期治療

a) 自家造血幹細胞移植の適応となる患者

65歳未満( 65歳以上70歳未満で臓器機能が良好で全身状態が良い場合にも)の初期治療には自家造血幹細胞移植を伴う大量化学療法が推奨される。移植前処置としてはメルファラン大量療法(200mg/m2)が標準的に用いられるが、腎障害を有する患者には140mg/m2への減量が行われる。

b) 自家造血幹細胞移植非適応の患者

65歳以上もしくは合併症などによる移植非適用患者の標準化学療法は40年間標準治療であったMP(メルファラン+プレドニン)療法に新規薬剤であるボルテゾミブを併用したMPB(メルファラン+プレドニン+ボルテゾミブ)療法またはLd(レナリドマイド+プレドニン)療法である。

c) 強化・維持療法

自家造血幹細胞移植後あるいは初回導入療法後にサリドマイド、レナリドマイド、ボルテゾミブを用いた強化療法や維持療法を追加することにより無増悪生存期間が延長することが示されている。しかし二次性悪性腫瘍を含む有害事象や費用に見合うだけの生存期間の延長は充分には示されていまいない。

2 初期治療抵抗例および再発・難治例の治療法

初期治療終了後6カ月以上経過してからの再発再燃であれば、初期治療を再度試みることにより奏功走行することが多い。しかし初期治療終了後早期の再発・再燃や染色体高リスク病型を有する患者に対しては、初回治療とは異なる新規薬剤を含む救援療法が推奨される。最近、経口のプロテアソーム阻害薬やヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、抗CD 38抗体、抗SLAMF7抗体なども薬事承認され再発・難治性骨髄腫に対する治療選択は多様化している。

3 交通病変に対する支持療法 

骨病変に対する支持療法としてビスホスホネート製剤または抗RANKL中和抗体の併用が推奨される。ただしいずれの薬剤も顎骨壊死の合併に注意が必要である。

4 同種造血幹細胞移植の位置づけ

治癒を目指すことのできる唯一の治療選択として同種造血幹細胞移植は魅力的である。しかし多発性骨髄腫に関しては移植関連死亡率が2~3割と高いこと、そして長期の生存解析でプラトーに至る治癒の可能性のある患者も2~3割にとどまることから効果は限定的である。

当院ならではの取り組み

日本血液学会へ患者登録とエビデンスに基づいた治療を実践しています。多発性骨髄腫の初期治療では、65歳未満( 65歳以上70歳未満で臓器機能が良好で全身状態が良い場合にも)の患者さんに推奨されている自家造血幹細胞移植を積極的に行っています。