骨髄異形成症候群

病因・病態・疫学

骨髄異形成症候群(以下、MDS)は異常な造血幹細胞が増殖と各血球系への分化を繰り返した結果、造血系が異常クローンに置換される後天性造血障害である。骨髄細胞数は一見保たれているが、病的なアポトーシスの結果として無効造血のために成熟血球を末梢へ十分に供給できず、慢性に経過する治療抵抗性の貧血・血球減少をきたし、しばしば骨髄不全に陥る。異常クローンは急性骨髄性白血病へ移行しやすい。

70歳以上の中高年齢者に好発するが、まれに若年者にもみられる。

大多数は原因不明であるが、ほとんどの症例は後天的な遺伝子異常によって発症すると考えられている。

症候・身体所見

MDSに特異的な臨床症状はなく血球減少と血球機能の低下に伴う一般的な臨床症状が認められる。貧血による労作時息切れ、白血球減少に伴う易感染症、血小板減少による出血傾向などである。

診断・検査

MDSの診断基準はWHOや厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)・特発性造血障害に関する調査研究班(特造斑)によって提唱されているが、基本的には末梢血と骨髄の検査にて以下の①及び②を満たすことで診断される。

  1. 1系統以上の血球減少
  2. 1系統以上の有意な異形成、MDSに特徴的な染色体異常、芽球増加(骨髄芽球:5~19%、末梢血芽球1~19%、あるいはアウエル小体の存在)のいずれかを満たす

血球減少があるものの異形成が有意と判定されず、染色体や芽球割合もMDSの診断基準に満たさない場合は、他疾患を除外したうえで意義不明の特発性血球減少症(ICUS:Idiopathic cytopenia of uncertain significance)の診断となる。ICUSの診断基準は確立しておらずWHO分類でも独立した病型とはされていないが、MDSへの移行リスクが高い病態として、注意深い観察が必要である。

病型分類

WHO(2017)では、 異形成系統数、血球減少数、骨髄/末梢血環状鉄芽球の割合、骨髄・末梢血芽球の割合、染色体異常、以上の5項目によって表のように分類されている。

MDSのWHO 2017 病型分類

異形成系統数 血球減少系統数 骨髄/末梢血環状鉄芽球 骨髄・末梢血芽球 染色体異常
1系統の異形成 1 1or2 <15%/<5% <5%/<1% いずれも
多系統の異形成 2or3 1~3 <15%/<5% <5%/<1% いずれも
環状鉄芽球を伴うMDS
1系統の環状鉄芽球 1 1or2 ≧15%/≧5% <5%/<1% いずれも
多系統の環状鉄芽球 2or3 1~3 ≧15%/≧5% <5%/<1% いずれも
5q欠損症 1~3 1~2 いずれでも <5%/<1% 5q-/-7/7q-
芽球の多いMDS
芽球の多さⅠのMDS 0~3 1~3 いずれでも 5~9%/2~4% いずれも
芽球の多さⅡのMDS 0~3 1~3 いずれでも 10~19%/5~19% いずれも
分類不能型
末梢血芽球が1% 1~3 1~3 いずれでも <5%/=1% いずれも
1系統の異形成と汎血球減少症 1 3 いずれでも <5%/<1% いずれも
特異的染色体異常を有する 0 1~3 <15% <5%/<1% MDS特異的異常
子供の難治性血球減少症 1~3 1~3 なし <5%/<2% いずれも

予後予測と治療

MDSは無効造血による血球減少(骨髄不全)と腫瘍細胞の増殖を特徴とする骨髄性腫瘍であるが、症例ごとに骨髄不全や腫瘍化の度合い、予後、治療反応性は大きく異なる。このため初診時にはリスク層別化を行って治療方針を決定する。

最近の国際予後スコアリングシステムIPSSでは骨髄中は球の割合、染色体異常、血球減少数を指標に数値化する。改訂版のIPSS-Rでは染色体異常、骨髄芽球の割合、ヘモグロビン値、血小板数、好中球数を指標に数値化している。具体的な詳細は割愛します。専門家にお尋ねください。

IPSS低~中等度-1あるいはIPSS-R低~中等度は低リスクMDSと呼ばれ、多くの症例で芽球増加が軽度であり、血球減少や機能障害など骨髄不全症状が臨床上最も問題となる。このため低リスク症例では主に造血改善を目的とした治療が行われる。一方IPSS中等度-2~高度あるいはIPSS-R中等度~高度は高リスクMDSと呼ばれ、多くの症例で芽球増加の顕在化、予後不良染色体の存在、著明な血球減少が認められる。これらの症例では白血病化による生命リスクが臨床上最も重要な問題となり、予後は不良であるため、抗腫瘍療法が選択される。

1) 低リスクMDSで治療対象となるのは血球減少が臨床的に問題になる症例である。まず貧血が主体となる場合は、5q欠損症ではlenalidomideがまず考慮される。非5q欠損症症例やlenalidomideが無効の場合には赤血球造血刺激因子が試みられる。これらの治療が無効の貧血症例あるいは白血球・血小板減少が有意な症例では、シクロスポリン(cyclosporine A)などの免疫抑制薬、メチル化阻害薬(azacitidine)、蛋白同化ステロイド(metenolone acetate)などが選択肢となる。薬剤の詳細に関しては専門家にお尋ねください。

2) 高リスクMDSは多くの症例で腫瘍化病態が強く現れているのが特徴であり、白血病リスクが高く、予後は不良である。可能であれば唯一の根治療法である造血幹細胞移植を行う。そして幹細胞移植を行わない(行うことができない)症例では抗腫瘍薬を選択することになる。

3) 支持療法はあらゆる症例に対して行われる。血球減少に対しては適宜輸血を行い、赤血球輸血による鉄過剰症が認められる症例に対しては、鉄キレート剤による治療を行う。

当院ならではの取り組み

日本血液学会へ患者登録を行い、エビデンスに基づいた治療を実践しています。