肝臓がん

肝臓がんは原発性肝がんと転移性肝がんに大別されます。原発性肝がんは、肝細胞がんと胆管細胞がんに分類されます。肝細胞がんの頻度が高く、全体の約93%を占め、胆管細胞がんは約5%です。残りはまれながんです。肝細胞がんはB型およびC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変に併発する頻度が高く、C型肝炎が70%、B型肝炎が15%を占めます。残り15%はアルコール性肝障害などの非ウイルス性肝疾患です。肝細胞がんは、もともと肝疾患を有する患者さんに発生することが多いがんです。従いまして、肝疾患を有する患者さんは肝細胞がんの発生を早期に発見するために定期的にエコーなどの画像検査を受けることが推奨されます。

症状・特徴

肝臓がんは早期には症状がなく、黄疸や腹水、腹痛などの症状はかなり進行した状態になって初めて出現します。早期発見には定期的な検査が必要です。肝細胞がんは肝疾患を有する患者さんに発生することが多く、このことから肝疾患患者さんは肝細胞がんの早期発見のため、定期的にエコーなどの画像検査を受けることが推奨されます。肝細胞がんはB型およびC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変に併発する頻度が高く、これに該当する患者さんは、特に気を付けて画像検査を受けることが望ましいです。ウイルスの治療を受ければ、発がん率は減少しますので、ウイルス肝炎の患者さんは早く治療を受けたほうが良いです。ウイルスを持っていても症状はないことがほとんどであり、まずウイルス検査を受けてみることが大事です。ウイルス検査は各自治体で助成制度がありますので、受けたことがない方は是非ウイルス検査を受けてみてください。

診断方法

肝細胞がんの診断は、血液検査である腫瘍マーカーと、画像検査で行います。肝細胞がんの腫瘍マーカーにはアルファフェトプロテイン(AFP)とPIVKA-Ⅱがあります。また、簡単に侵襲なく施行できるのが腹部エコーです。肝疾患を有する患者さんはこの腫瘍マーカーとエコー検査を定期的に受けて、肝細胞がんの発生を監視する必要があります。腫瘍マーカーの上昇やエコーで腫瘍が疑われた場合は、造影CTや造影MRIで精密検査を行います。この結果、肝細胞がんの特徴である動脈血流優位の濃染像が認められた場合は確定診断できます。精密検査してもはっきりしない場合は腫瘍生検(超音波ガイド下に腫瘍を生検する方法)を行うこともあります。

治療方法

肝細胞がんの治療は、外科切除、ラジオ波焼灼術、マイクロ波凝固療法、エタノール注入療法、肝動脈塞栓術、化学療法、放射線療法などがあります。最も効果良好なのが外科切除ですが、3センチ以下の小さな肝細胞癌ではラジオ波焼灼術やマイクロ波凝固療法でも外科切除に匹敵する治療効果が挙げられます。肝細胞がんは肝疾患を有する患者さんに発生することが多いため、背景の肝疾患により肝機能が不良の場合、外科切除はできないこともあります。このように肝細胞がんの治療には、がんの大きさ、個数、位置、肝機能のすべてを考慮して最適な治療法を選択する必要があります。がんが3センチ以下で3個以内の場合はラジオ波焼灼術やマイクロ波凝固療法も可能であり、これらの治療の場合は肝機能が不良の場合も施行可能です。ただ、腹水がたまったり、黄疸が出たり、肝性脳症があるような肝機能が非常に悪い場合は、どの治療法も困難です。エタノール注入療法はラジオ波やマイクロ波が使用できない場合に選択されます。効果的にはラジオ波やマイクロ波のほうが優れていますが、腫瘍の場所から熱による治療ができない場合、エタノールなら可能なことがあります。肝動脈塞栓術は、手術・ラジオ波・マイクロ波ができないときに選択されることが多いです。腫瘍の個数が多い場合や、比較的大きながんの治療に選択されます。肝細胞がんは動脈血流で栄養されるため、肝動脈を遮断することによりがんを壊死させる方法です。肝動脈塞栓術は繰り返し施行すると、効果が不良になったり、また肝機能が不良になったりしますので、最近では効果不良になれば化学療法に移行することが推奨されるようになりました。化学療法に関しては、最近では新薬が次々に販売開始になり、選択に苦労するような状態になってきました。約10年前から使用されてきたネクサバールも使用可能ですし、他にスチバーガ、レンビマ、サイラムザが使用可能になりました。この中ではレンビマの効果が優れており、選択することが増えてきましたが、副作用もある程度経験されますので、慎重に経過を見る必要があります。最近ではノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害剤を用いたテセントリク+アバスチン併用療法が2020年より使用可能となり、今では肝細胞癌の薬物療法の中で最も効果が高いと報告されています。また2023年には新しい免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせたイジュド+イミフィンジ併用療法も使用可能となり、薬物療法の幅が広がりました。放射線療法は、進行肝細胞がんの一つの合併症である門脈腫瘍栓に使用されることが多いですが、定位放射線治療として、比較的小さな単発の肝細胞がんの治療に使用する場合もあります。がんの位置や肝機能により制約がありますが、痛みや苦しみを伴わないという特徴があり、高齢者できつい治療を望まない方にお勧めしています。

当院ならではの取り組み

肝胆膵内科の副院長の坂口は、前職の大阪市立大学で肝細胞がんに対する腹腔鏡的治療を多数手がけてきたことから、外科に協力いただいて腹腔鏡下のラジオ波焼灼術が施行可能です。肝切除ができないような肝機能不良の患者さんでも全身麻酔下の腹腔鏡下ラジオ波焼灼術が施行可能な場合があり、従来のエコーガイド下の治療よりも良好な効果が期待できる場合があります。また、エコーガイド下のラジオ波焼灼術も、希望される方には全身麻酔下に施行可能であり、痛みを伴う治療を拒否される方には有用です。また定位放射線療法は比較的小さな単発の肝細胞がんの治療に施行可能です。がんの位置や肝機能により制約がありますが、痛みや苦しみを伴わないという特徴があり、高齢者できつい治療を望まない方にお勧めしています。また化学療法に関しては、保険適応のある製剤をいち早く積極的に導入するように心がけており、最先端の治療が受けられるよう配慮しています。緩和ケア病棟もありますので、終末期に移行しても、積極的に緩和ケアが受けられるよう配慮しています。